両親を見送り、実家の処分、自分の病気と散々だった60代。前向きに元気になれたのは「夢ノート」のおかげ。シニア世代こそ書いてほしい「夢ノート」

(写真:stock.adobe.com)
やりたいことを書き出し、実現に近づけていく「夢ノート」を、40年以上続けている中山庸子さん。70代を迎えた今、この習慣の大切さをあらためて感じていると言います。「書く」ことのメリットや、願いを叶える秘訣を聞きました(構成:上田恵子 撮影:藤澤靖子)

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【画像】「夢ノート」を書いてみよう

親の介護や自身の病に翻弄された10年

ありがたいことに、夢ノートのおかげでこれまで多くの願いを叶えてきました。「いつも前向きで元気」と思われがちな私ですが、実は、60代以降はしんどいことも多かったのです。

アルツハイマー型認知症を患った父が亡くなった後、群馬の実家で一人暮らしをしていた母を東京に呼び寄せたのは、私が63歳のとき。当時86歳の母はリウマチなどの持病はあったものの、まだまだ元気でした。ところが、90歳の誕生日を祝った1週間後に転倒。そのまま介護生活に入り、1年後に見送りました。

そして喪失感が癒えないなかで立ちはだかったのが、実家の処分問題です。特徴的な立地だったこともあり、売却は遅々として進まず。そうこうするうちに、今度は私自身が倒れて救急車で運ばれたのです。69歳のときでした。

検査しても原因がわからず、それどころか処方された薬の影響で肝臓の数値が悪化して再び倒れてしまい、またもや救急車のお世話に。母は生前、「60代が一番楽しいわよ」と言っていましたが、とんでもない(笑)。私の場合は、想定外のことに振り回された10年だったのです。

その後、小腸に潰瘍ができて閉塞を起こしていることがわかり、70歳のときに小腸の一部を切除する手術を受けました。再発しやすいため現在も経過観察は続けていますが、順調に回復。そして先頃、2年間こじれていた実家の売却問題がついに解決し、ホッとしているところです。

仕事のことから家のこと、趣味や心の持ちようまで。達成したら行の頭にシールを貼ってモチベーションアップ

しんどい時期も、夢ノートだけは書き続けていました。今見返すと、「元気になってXXをする」という夢がたくさん並んでいる。「書く」ことで希望が潜在意識に刻まれ、毎日を乗り切る原動力になったのです。

また、母の晩年を振り返ると、「意欲を持ち続けること」の大切さを痛感します。母は、90歳の誕生日に大島紬の着物を着て祝ってもらうのを楽しみにしていて、見事に夢を叶えました。

しかし、母にとってはそこがゴールで、《90代》のことは考えていなかった。転倒したとき、母には完治後にやりたいことがなかったため、一気に弱ってしまったのです。「子どもに迷惑をかけたくない」という願望はあったようですが、それはポジティブな夢ではありませんから。

一方で、父は生前、「孫のお遊戯会に参加する」「次のオリンピックを観る」といったように、定期的に夢を設定して、張りのある毎日を送っていたのが強く印象に残っています。

今や人生100年時代。夢ノートは、気力が衰えやすくなる世代にこそ書いてほしい。夢というとハードルが高く感じるかもしれませんが、決して大きくてキラキラしたものではなくていいんです。私自身、夢の内容は年齢とともに変化し、昔のようにギラギラした欲を持つこともありません(笑)。

最近は自分にとって必要なものが明確になり、持ち物を最小限にしてコンパクトな生活に。特に病気をした後は、小さなことにも感謝できるようになったからか、ささいな願いやしたいことを書く機会が増えました。それが心地よくて、今、とても幸せなんです。

日当たりのよい窓際のテーブルが、夢ノートを書くときの特等席。お気に入りの文具や本に囲まれて

夢の内容は簡潔かつ具体的に

では、あらためて夢ノートの書き方をお伝えしましょう。用意するものは、罫線が入った大きめのノート、書き心地のいいペン、100均ショップなどで買える可愛いシールやスタンプなど。私は雑誌の切り抜きや写真をペタペタ貼ってしまうので、ノリやセロハンテープ、はさみなども常備しています。

ちなみに、ノートは薄めのものがベター。使い切りやすくすることで、達成感が味わえるからです。叶った夢にはシールを貼ったりスタンプを押したりして、「済」の印をつけていきましょう。

夢の内容は、行動にうまく結びつくよう簡潔かつ具体的に。たとえば、「ハンカチを買う」ではなく「白いスワトウ刺繍のハンカチを買う」と書くことで、希望が明確になり、お目当てのものを見つけやすくなります。

そして大事なのが、楽しめるように書くこと。「大掃除する」だと腰が重くなるので、ハードルをグッと下げて「棚を1ヵ所だけ拭く」。これなら空き時間に、気分転換がてら実行できます。

リストの中に、すぐに達成できる《サクラ》を混ぜておくのもおすすめです。たとえば、「韓国ドラマの続きを観る」だったら、とても簡単でしょう。

次のページでは、夢が叶いやすくなるポイントを紹介しますので、ぜひ実践してみてください。

中山さん流!実現しやすくなる4つのポイント

理想の自分に近づきやすくなるリストをつくるには、ちょっとしたコツがあります。中山さんが40年以上かけてたどり着いた方法を紹介!

【Point1】夢は大きくなくていい。ハードルを低くして

(イラスト:霜田あゆ美)

夢は大きな塊でとらえず、薄くスライスして細分化すると叶えやすくなります。名づけて「ローストビーフ方式」。たとえば「海外旅行に行く」という夢なら、「パンフレットを取り寄せる」「その国のことをネットやYouTubeで調べてみる」「新しいキャリーケースを買う」「パスポートを更新する」といった感じ。旅の前段階だけでもできることは何十個もありますし、最初の一歩を踏み出すハードルもグンと低くなります

【Point2】「自分主体」を意識して自信につなげる

モチベーションを維持するために、プレッシャーになりすぎない書き方をすることも大切です。「XKgやせる」ではなく「やせるための努力を続ける」と書けば、たとえ体重が思うように減っていかなくても、少しでも努力した自分に対して「頑張ったね!」と達成シールを貼ることができます。叶えたいことは能動的に書く。そうすると、後日ジャッジしやすくなるだけでなく、自分で自分を褒めるいい機会になるはずです

【Point3】リストを書くための特等席をつくる

私がノートを書くのは、必ず決まった場所(前ページ写真参照)。「そこへ行けば宝物がある」というスペースをつくっておくと、自然とポジティブになれるスイッチが入ります。たとえば私は、お気に入りの筆記用具のほか、集めた可愛いシールをきれいな空き箱にセット。雑誌で心に留まった記事も切り抜いて、箱の中にストックしています。好きな時間に好きな飲み物やお菓子を用意して、ゆったりした気分で夢を考えてみましょう

【Point4】定期的に見返して、内容を更新しよう

書いた内容を忘れないよう、1ヵ月に1度はノートを開きましょう。また、以前は心に響いた言葉がそうではなくなるなど、人の思いは時間とともに変わるもの。私自身、2年前の入院中に書いたノートを今見返すと、「あのときはこう考えていたのね。もう遠い昔のことみたい」と、不思議な気持ちになります。叶っていなくても、今の自分に必要なければ「卒業」の印をつけてもOK。夢を来年に持ち越したり新たに追加したり、柔軟にアップデートを

お試し版 夢ノートを書いてみよう!

恥ずかしがらず、思いのままに書き込んで。

最近あった「いいこと」を記録するのも、気分が上がるのでおすすめです。

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