毎週末里帰りしてくる義姉家族。平日は仕事、休日は「夫家族」に奉公する私の体重は、嫁いで数年で10キロ減。そんな生活に訪れた希望の光は
03/19 12:30
婦人公論.jp

事情があって、一緒に住んでみたけれど。実際は悩ましいことばかり……。千田久花さん(仮名・千葉県・パート勤務・68歳)は、小さな農村の一家に嫁ぎ、明治生まれの大姑と、義母と同居することとなったそうで――。
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甘い言葉に騙されて農村の一家に嫁いだものの
「夕方5時半頃に着くから、準備をよろしくね」。土曜日、夫の姉から恐怖の電話が入る。婚家では毎週、義姉とその子どもたちもあわせての「家族団らん」が行われていた。しかしそこに、私の席はない。
私が嫁いだのは、小さな農村の一家。明治生まれの大姑と、若くして夫に先立たれ、一家の主として家を守ってきた義母と、同居することになる。義母や夫に「親族に尽くすのは嫁として当たり前のこと」と言い聞かされた私は、週末のたびに義姉一家をもてなした。
テレビで野球観戦をしながら、夕飯を囲む義母たちを横目に、私は座る暇もなく立ち働く。姑は自分では決して台所には立たないし、夫は私がため息をついても知らぬ顔。そして大姑は、義母に頭があがらず何も言えない。
平日は仕事、休日は「夫家族」に奉公する私の体重は、嫁いで数年で10キロ減った。私の心にゆとりがなかったせいか、わが家の子どもたち2人は、言いたいことを言えないひっこみ思案に育っている。義姉が連れてくる子どもたちは、まるで自分の家かのように振る舞っているのに……。
甥と姪を私に預け、義母と義姉がデパートなどに出かけることもあった。甥も姪も私によく懐き、私も可愛く思っていたが……。ある日、私が預かっている間に姪が発熱したことを、「お前の責任だ」と夫になじられたのはつらかった。
夫は自分の子どもより、常に自分の母親と姉家族を優先。マザコン代表のような男で、私に一切のおさんどんを委ね、時間があれば仲間たちとテニスにスキー。見事に家庭に無関心なひとだ。
夫には大切にされなかったが、大姑は私に優しかった。「休む暇がまったくないねえ。一番疲れているのはお前なのにねえ」と、時々私の頭をなでてくれ、年金が出ると、こづかいをくれることも。
「どうせ私の年金は、お母さん(義母のこと)に取られてしまうからね」「でもお母さんに逆らってはいけないよ。仕方がないことなのだよ」と言い聞かされた。
大姑は、私が家を出て行ってしまうのではないか、と心配していたのかもしれない。実際、つらくてつらくて一晩中、玄関先でボストンバッグを抱え、座り込んでいたことが何度もある。
どうしても我慢できない時には、義家族が畑に行っている隙に、来客用のたくさんの食器の中から、縁の欠けた器や茶碗を選び、かまどのある土間の三和土(たたき)に思いきり叩きつけて、心のモヤモヤを発散させる。
姑息な手段かもしれないけれど、私が何か文句を言うと義母、夫、そして義姉から苦情が3倍になって返ってくるので、こうするしかなかったのだ。
しかしすぐに、その方法にも限界を感じるようになる。思えば、嫁ぐ前の私は幸せすぎた。両親に守られ、毎日心から笑っていたのだから。夫は結婚する時に、「仕事を持っているのだから、家事はしなくていい。習い事も続けていいよ」と言ったのに、人生最大の詐欺に遭った気分。結婚とは、こんなものなのか。
粉々に砕け散った茶碗を、自分で掃き集めることにもみじめさを感じ、迷路に迷い込んだような毎日だった。
子どもを希望に自分の家族を取り戻す
そんな私に希望が訪れたのは、嫁いで10年近くたった時。双子を授かったのだ。これは何年も前から望んでいたことだった。毎週末の義家族の団らん中、居場所に悩む2人のわが子を見て切なくてしかたなかった。よし、もう1人子どもをもうけよう。そうすれば、私や子どもにとっての味方が増える。そんな切望の中での双子の妊娠は、神様からのご褒美だった。
義姉をはじめ、親戚の出入りの多い婚家で、いつも他人扱い。嫁さんと呼ばれるだけの私の日常に、「お母さん」と呼んでくれる宝物が増えた。2人の赤ちゃんの泣き声は、私を強くしてくれる。これまでと同じ環境では体を壊してしまうと思い、双子を出産してすぐに、私は夫にはっきりと伝えた。
「私にはもう、週末、ほかの家族を受け入れる余裕はないです。これからもお義姉さんたちが毎週来るようなら、4人の子どもを連れて離婚します」
私の決意表明の力強さに圧倒され、夫がおずおずと義姉に電話をかけた。その後の義母と義姉の暴言は想像通りだったが、私は譲らない。双子が生まれて数ヵ月が過ぎたころ、大姑が92歳で他界。私にとって、とても大きな存在の祖母だった。
産後の私の心のたすけは、趣味の庭仕事。花たちは、手をかければかけるほど元気をくれたものだ。しかし、泊まらないとはいえしょっちゅう実家に立ち寄る義姉が、私好みでない花を庭に植えることがあった。嫌だと言っても勝手に植えていく。
そろそろ私色の庭にしたい……そう考え、義姉の植えた花の苗に、合成洗剤をかける方法を思いつく。花に罪はないのに、まったく姑息なやり方だ。
世界一の悪党になったような後ろめたさで、次々と苗を弱らせていく。3~4種類枯れたところで、「私の持ってくる花は、この家の土に馴染まないみたいね」と諦めてくれたので、ほっとした。
気がつけば、嫁いで44年。たくましさだけは身についた。強かった義母も、老いには勝てず、10年前に亡くなった。義母が亡くなった後の夫は荒れ、私への暴言も増えるばかり。
私が過労で倒れたこともあるし、一時は夫と別居もしたが、今はまた同じ家に住んでいる。彼とは、最後まで他人の空気感が拭えないままに、老いていくのだと思う。
しかし子どもは全員立派に育ち、巣立っていった。近年は孫を連れて、家に遊びに来てくれるのが嬉しい。
私が今心に決めているのは、大姑のような心のあたたかい老人になるということだ。まだ68歳、過去の自分の姑息な行為を反省しつつ、ゆっくりと成長していきたい。
家族との関係に悩んだら…
千田さん(仮名)は、夫や義母、義姉からの仕打ちに耐えながら、子ども4人を育て上げました。
関係性が近い人とのトラブルほど、他の人に相談できずに一人で抱え込んでしまう人が多いかもしれません。
悩みがある方・困っている方に向けて、気軽に相談できる場所があります。自分を追い詰めてしまう前に、第三者からのサポートを受ける選択肢も視野に入れてはいかがでしょうか。
●まもろうよこころ
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
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Tel:0120-279-338(つなぐ ささえる)(フリーダイヤル・無料)
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