マスクを外したら気になるニオイ。それは<あのサイン>かも…総合内科専門医「口臭は口だけの問題と捉えず、カラダ全体の変化の中で考えるべき」
03/19 12:30
婦人公論.jp

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この季節増える相談
今はまさにスギ花粉が飛び交う季節。
マスクを外した時、「あれ? 私の息、こんなに気になった?」と戸惑ったことはありませんか。
外出先でマスクを外したとき、自分の息が気になる。歯磨きもしているし、歯科検診でも問題はない。それでも…
このような相談は、40代後半から50代の女性に増えてきます。
春は、花粉症による鼻づまりから口呼吸が増えたり、マスクの着用時間の増加などが重なり、口腔内が乾燥しやすい環境になります。しかし原因はそれだけではありません。
マスクの中で感じる口臭は、更年期のエストロゲン減少によって増えやすくなる便秘や疲れやすさなど、体の変化が重なって起こっている可能性もあるのです。
実際、エストロゲンの減少は自律神経のバランスを変化させ、腸内環境を乱したり、唾液分泌の低下を招いたりします。ですから、口臭を口だけの問題と捉えず、更年期という体全体の変化の中で考えてみましょう。
「最近、口臭が気になる」その変化は更年期のサインかも
口臭が気になり始めたとき、体の中では他にも小さな変化が起きていることがあります。たとえば、こんな症状に心当たりはありませんか。
●口が乾きやすい
●朝の口の粘つき
●舌の白さ
●便秘
●疲れやすさ
これらは一見バラバラの症状に感じます。しかし実は同じ背景から起きていることがあるのです。
そもそも更年期は、体のいたるところで「いくつかの不調が同時に起こる時期」。その背景に“エストロゲン”の低下があります。
エストロゲンは、生殖機能だけでなく、全身の粘膜の潤いを保つ働きも担っています。実際に、閉経後の女性では、エストロゲンの減少とともに唾液分泌量が低下することで、ドライマウス、いわゆる口腔内の乾燥症状の増加が報告されています。(※1)
(※1)Unstimulated Salivary Estrogen in Postmenopausal Women With and Without Oral Dryness: A Prospective Study:Aanchal Gupta et.al, The Open Dentistry Journal, 2022
唾液は『天然の洗浄液』
唾液には、口腔内を洗い流す働きや抗菌作用、pHを調整する機能などの役割があります。
一方で口臭は、口腔内細菌が産生する物質の主成分である揮発性硫黄化合物が原因といわれています。(※2)
そして唾液が減少すると細菌が増殖しやすくなり、揮発性硫黄化合物の産生が増える。つまり更年期のドライマウスは、科学的にも口臭リスクの上昇と結びついているわけです。
(※2)Production and origin of oral malodor: a review of mechanisms and methods of analysis. Tonzetich, J Periodontol, 1977
近年注目されているのが、「エストロゲンと腸内細菌の相互作用」です。
ある研究では、腸内細菌群がエストロゲン代謝に関与することを報告しています。また、逆に閉経に伴うホルモン低下が、腸内フローラの構成にも影響を与える可能性があるとされています。(※3)
更年期に差し掛かると便秘が増えるワケ
なお、こうしたホルモンと腸の関係は、更年期に増えがちな「便秘」とも無関係ではありません。
(※3)Estrogen-gut microbiome axis: Physiological and clinical implications, James M Baker et. al, Maturitas, 2017
女性はもともと便秘気味の方が多いのですが、更年期以降はさらに、その割合が増加します。
その理由として、エストロゲン低下による腸管運動の変化、自律神経の乱れ、骨盤内の筋力低下などが重なることが考えられます。
腸内で便が停滞すると、腐敗産物やアンモニア、硫化水素などが発生します。これらの一部は血流を介して肺に到達し、呼気に影響を与える可能性があるとされています。
また、腸内フローラの構成と、体内で循環している様々な炎症性物質やアミノ酸などの代謝物との間に相関関係があることが報告されています。(※4)さらに、腸内フローラの乱れと口臭との関連性についても、多くの研究で示されています。(※5)
つまり、腸と口は、想像以上に密接に関わっているのです。
(※4)Relationship between gut microbiota and circulating metabolites in population-based cohorts, Dina Vojinovic, Nature Communications, 2019
(※5)Halitosis: etiology, prevention, and the role of microbiota, Zhengrui Li, Clin Oral Investig, 2023
もう一つの要因「自律神経の乱れ」
更年期では、腸内環境だけでなく、自律神経のバランスにも変化が起こりやすくなります。
自律神経が乱れることで気持ちの「ゆらぎ」が出やすくなります。また、睡眠の質も低下し、全身で関節痛や腰痛、熱感などの軽い炎症が起こりやすい状態となります。
近年は、「腸脳相関」という概念も注目されており、腸内環境の乱れが脳や自律神経の働きに影響しうることが報告されています。(※6)
そして、唾液の分泌は、自律神経が制御していることも知られています。(※7)
唾液は、口腔内を洗浄し細菌の増殖を抑える「天然の洗浄液」のような役割を担っていると前述しました。よって、自律神経のバランスが乱れると唾液の分泌が低下し、口腔内の乾燥が起こりやすくなります。
つまり、更年期に伴う女性ホルモン低下が、自律神経の乱れを通じて疲労感、不眠などの体調の変化をもたらし、その結果、唾液の分泌が減って口臭につながる…という連鎖が、人間の体の仕組みで説明が可能なのです。
(※6)Gut–Brain Axis and Neuroinflammation: The Role of Gut Permeability and the Kynurenine Pathway in Neurological Disorders, Rowan Kearns, Cellular and Molecular Neurobiology, 2024
(※7)Regulation of salivary gland function by autonomic nerves, Gordon B Proctor,Auton Neurosci, 2007
口臭は『体の変化を知らせるサイン』
更年期腸活と腸のケアは、まず、「整える」ことが基本です。そこで、更年期の腸活・腸ケアのための食習慣の5つのポイントをお伝えします。
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【ポイント1】朝のたんぱく質
朝食では、必ずたんぱく質を摂取するようにしましょう。腸は『朝に動く臓器』です。朝からのたんぱく質摂取は腸のぜん動運動を促し、便通を促進します。
<朝食例>
雑穀米+納豆+卵、具だくさんの味噌汁、豆乳ヨーグルト+ナッツ
このような朝食がとてもお勧めです。
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【ポイント2】腸ケアとしての水溶性食物繊維+発酵食品
水溶性食物繊維(プレバイオティクス)と発酵食品(プロバイオティクス)の組み合わせは腸内環境改善に有効です。(※8)
発酵食品(味噌、納豆、麹、酒粕、ヨーグルト、キムチなど)は善玉菌の補給になります。また、水溶性食物繊維(海藻、オクラ、もち麦、りんごなど)は、腸内細菌のエサになります。この「菌+エサ」の組み合わせが理想なのです。
(※8)Synergistic role of prebiotics and probiotics in gut microbiome health: Mechanisms and clinical applications, Tapasya Kumari, Food Bioeng. 2024
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【ポイント3】水分補給
慢性的な脱水は便秘や唾液減少に影響します。日頃から十分な水分摂取を心がけてみましょう。目安は1日1.5〜2リットル(体格・活動量により調整)。一度に大量ではなく、こまめな飲水を心がけましょう。
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【ポイント4】よく噛む
よく噛むことが唾液分泌を促す強い刺激となります。一口30回を目標に。よく噛むことで副交感神経が優位になり、腸の動きも整いやすくなります。
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【ポイント5】口腔ケア
歯垢やプラークといった歯周病の原因を防ぐために、こまめに歯のブラッシングや歯間ケア、舌ブラシで優しく舌の清掃も行いましょう。そして、3ヶ月に1度は、定期的に歯科検診を受けて、メンテナンスを行いましょう。
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これらの口腔ケアと腸ケアを行い、両輪で整えることが重要です。
以上、更年期前後は、女性の体が次のステージへ移行するための大切な時期。
そのタイミングを迎えた女性がマスクの中でのニオイに気づいたとすれば、それは「恥ずかしいこと」などではなく、更年期の前後に起きる体の変化を示した“サイン”なのかもしれません。
そして、そもそも“口臭”は単なる口の問題ではなく、「体と腸のゆらぎ」を教えてくれている可能性のあるもの。
花粉や黄砂対策でマスクをつけることが多くなる春、たまにニオイをチェックしてみることは、自分の体の変化に気づき、新しい習慣を始める一つのキッカケになるのかもしれません。