【奈良県天理市】「新基準原付」駐車場は「旧基準」!? 125cc「利用不可」の理由は“サイクルコンベア”

原付バイクの排気量が50ccから125ccに引き上げられました。利用者にとっては新たな負担増ですが、基準変更の大きな目的である排出ガス規制強化に対応するためにはやむを得ない措置です。ただ、バイク駐車を受け入れる側は、この新基準への変更をどう考えているのでしょうか。「利用不可」を掲げる奈良県天理市に聞きました。

入口に「利用不可」の看板!? これでは……

 奈良県天理市川原城町、近鉄/JR桜井線「天理駅」前にある「天理駅前地下自転車等駐車場」は、北と南の2カ所で合計288台のバイク駐車が可能です。

「新基準原付」が販売されて以後、天理市は赤い字で大きく、こんな警告看板を張り出しました。

【新基準原付利用不可】

 これに対してSNS上の投稿では、「じゃあ新基準原付は何処に止めれば……ナンバーは白色やのに」といった困惑が書き込まれました。

 排気量が50ccから125ccに引き上げられたのは、政府の排出ガスの規制強化に対応するための措置です。原付の新基準は50cc同様に、走行性能のもとになる最高出力が4kW以下に抑えられ、運転者の従うべき交通ルールは何も変わりません。

 2025年11月から50ccエンジンバイクの製造、新車の販売は事実上できない状態で、新たにカテゴリーが加わったと言うより、原付バイクの車両ルールが「125cc以下」に変更された状態です。

 そのため国土交通省をはじめとする関係省庁は、ルール改定を都道府県を通じて地方自治体に伝えていますが、駐車場に関する原付バイクの利用を制限する問題は全国各地で噴出しています。

シビアな基準設定に課題が

天理駅前北地下駐車場の出入口に置かれた「利用不可」と大書された看板。排気量は車体の大きさを反映しないのだが(画像=天理市提供)

 天理市の「利用不可」の理由は意外なところにありました。

「当該駐車場は地下施設の性質上、退場の際にコンベアベルトを使用します。原付の基準が変わる際にベルトの製造業者へ確認したところ新基準原付が当該駐車場を利用することは難しいとの返答でした」(防災安全課)

 コンベアベルトとは、立体自転車駐車場で地下フロアから地上への昇降に、車体の押し歩きを簡単にする設備のことです。

 サイクルコンベアのレールにタイヤをはめ込むと、利用者は車体が倒れないように支えているだけで、コンベアベルトの力で車体を運ぶことができます。

 天理駅前自転車駐車場の施設は、コンベアが傾斜を上り切ってから地上で水平になる「水平距離」が短く、利用者に危険を及ぼす可能性があると説明します。

「125ccクラスのバイクの後輪が上がり切らない、後輪が傾斜部にあると前輪ブレーキを開放した際に負荷がかかり、バイクを押し上げる必要がある。これによりバイクもしくは運転手に転倒等の危険がある。あわせて、コンベアベルトのモーターも50ccバイクまでの運搬を想定した容量となっているため負荷が大きくかかり、故障のリスクが高くなる」(前同)

 車体が水平を保つためには、前タイヤと後タイヤ接地点間の距離(ホイールベース=軸間距離)と同じ距離が必要です。

 例えば、ホンダの50ccバイク「タクト」は1180mm、「スーパーカブ50」は1210mm、さらに2026年2月に発売された電動50ccクラスの「ICON e:」は1300mmです。

コンベアベルトを使うことで重いバイクも軽々登ることができる。事故リスク回避のため自走で下るが登ることは禁止(撮影=中島みなみ)

コンベアベルトを使うことで重いバイクも軽々登ることができる。事故リスク回避のため自走で下るが登ることは禁止(撮影=中島みなみ)

 この駐車場のコンベアベルトの水平部分は、じつは900mmしかありません。これは50ccバイクのホイールベースよりも短い設定です。

 50ccと125ccのホイールベースは、あまり変わらず1200~1300mmの範囲です。原付バイクの基準が50ccだった当時から、水平距離は足りていません。

2026年4月から125ccの受け入れが始まる

 ただ、天理市も手をこまねいているわけではありません。

「環境改善という点からすれば新基準原付への乗り換えを促進することは重要である」(防災安全課)として、次のような対応を公表しました。

「コンベアベルトを改修し、問題になっている水平距離を1200mmまで長くして、モーターの容量も大きいものに変えることで新基準原付での使用も可能とします。令和8年(2026年)3月に工事を行い、同年4月より新基準原付の駐輪を開始します」

 天理市内には、ほかにもバイクを収容できる自転車駐車場があります。平面駐車場の場合は125cc以上のバイクについても駐車が可能です。

 車両の大きさを定める法令は、乗りものの最大値を示し、市販車の実態を反映しているわけではありません。

 バイクに限らず、電動アシスト化する自転車も車重や車格が大きくなっていて、古い基準が新しい時代に対応できないことがあります。

 駐車場の整備は市区町村の仕事ですが、関係省庁や都道府県が法令改正に対応した駐車基準を明示することで、地方自治体はより低コストで運営が可能になるのかもしれません。

元記事を読む