ばけばけ・ヘブンはトキに「帝大クビ」を言った方がいいのでは? モデル・小泉セツの当時の反応は「正直」「信頼感じる」
03/18 13:05
堂々と収入の件を

連続テレビ小説『ばけばけ』24週117話では、主人公「雨清水トキ(演:高石あかり)」の夫「雨清水八雲(レフカダ・ヘブン/演:トミー・バストウ)」が、勤めていた東京帝国大学を解雇されていたことが明らかになりました。118話では秘密を共有する「松野司之介(演:岡部たかし)」と、帝大生になった「錦織丈(演:杉田雷麟)」も協力してクビになったことを家族たちに隠そうとしていましたが、視聴者からは「早く打ち明けた方がいいのでは」というコメントも出ています。
帝大で400円もの給料をもらっていたヘブンは、収入がなくなって必死にベストセラーを書こうとし、さらにアメリカにいる「イライザ・ベルズランド(演:シャーロット・ケイト・フォックス)」にも、手紙で講義の仕事がないか聞いていました。視聴者の間では、「トキには解雇されたこと早く言った方がいいよね」「八雲先生、再就職先のあてがあるならともかく、早めに解雇の件言った方がいいと思う」「言わない方がジゴクでは」「正直に早めに言うた方がキズは浅く済むのに、なんでこういう時って隠しちゃうんだろ」といった声が相次いでいます。
史実だと、モデルの小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は1903年1月に当時の東大学長・井上哲次郎から解雇通知を受け取り、3月末で退職しています。学生たちから留任運動があり、井上自らが大久保のハーンの家を訪れて3分の1の給与(ハーンは月に450円もらっていた)で残ってほしいと言ったものの、ハーンは手紙1通で自分をクビにしようとした態度が許せず、その提案をはねつけました。
正直者で直情的な性格のハーンは、家族にも帝大解雇の件はすぐに話しており、トキのモデル・小泉セツも特に慌てはしなかったようです。当時9歳だった長男・一雄は著書『父「八雲」を憶う』(1931年)のなかで、母・セツが
「パパ様は今度帝国大学の方をお止めになさることになりました。パパ様のことだから私達が食べられないで困るようなことはなさらないだろうけど、何分普請をした後ではあり、今までよりは収入もずっと減るのですから、お前もそのつもりで余り我儘をいってはいけませんヨ」
と言ってきたことを振り返っています。小泉家が大久保の屋敷を購入したのは1年前の1902年3月のことで、その改装でかなりのお金を使っていたそうです。
また、一雄が「ハアー、じゃア家が貧乏になるんですネ?」と聞くと、セツは「サア、マア幾らかネ、パパ様は大学から月々取った分くらいは書く方で取って見せるとは仰るだども、この方は月々入るのとは違ってネ、時期を待たなくちゃならんからネ」と、正直に収入の事情を話したといいます。
セツは子供の頃に養家の稲垣家が大借金を抱え、11歳から実父・小泉湊の機織り工場で働き始めた筋金入りの苦労人で、いったん夫の収入がなくなったくらいではそこまで動じなかったようです。一雄に語った言葉からは、ハーンへの信頼も感じます。同じ生い立ちのトキも、ヘブンが解雇の件を話しても特に慌てはしないかもしれません。
その後、ハーンは早稲田大学に招聘され、1904年3月から週4時間の授業で年俸2000円という条件で働き始めました。また同年4月には代表作『怪談』を発表し、しっかり「書く方」でも結果を出しています。セツも元となる説話の語り部として、同書の完成に大きく貢献しました。
※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『父「八雲」を憶う』(千歳出版)
(マグミクス編集部)