「小学生に興奮したことある?」と聞かれショックを受けた現役教師…“変態教員グループ事件”の余波…名古屋市は市内の学校に盗撮機器のチェックを通達「授業のスマホ持ち込みも禁止になった」
07/03 18:25
〈「両親は元校長で人格者」「4歳くらいから九九が言えて頭がよかった…」生徒のリコーダーに体液を混入させた水藤翔太被告の華麗なる経歴〈変態教員グループに閣僚も怒り〉 〉から続く
名古屋市の小学校教員をはじめとする“変態教員グループ”が女子児童を盗撮し、SNS上で共有したとして逮捕された事件をめぐり、現場で真面目に働く教員たちまでが疑いの目を向けられ、事件と接点のない小中学校にも“余派”は広がっている。名古屋市教委は2日、市内の幼稚園と小中高を対象に校内に盗撮機器がないか調べる通達をだした。一方で、教育現場は人手不足、制度の限界など深刻な課題を抱えている。現役教師たちのリアルな証言から、いま学校で何が起きているのかを追った。
【画像】「児童生徒らの信頼を裏切る許しがたい行為」愛知県の教師たちに配られた、わいせつ事件に関してのプリント
「教師=ロリコン・変態」という目で見られるのは本当に心外
女子児童を盗撮し、SNSで動画を共有するなどの容疑で、名古屋市の小学校教師が逮捕され大きな話題をよんでいる。
そんななか7月2日、名古屋市教委は「各校園における撮影機器等の有無に関する調査」と称して名古屋市内のすべての幼稚園、小中高を対象に盗撮機器がないかを探す取り組みを行うように通達をしたという。
「市から『2人1組になって更衣室やトイレや教室、校内で着替えをする場所のすべてを点検せよ』と通達がきました。『7日までに実行するように』と期限もきまっており、本日15時から30分かけてチェックを行いました。わが校の教師は事件とまったく関係ないし、もちろんカメラはみつかりません。ですが、本当に盗撮機材を探すなら業者に頼まないと意味がない。みんな命令だからと渋々やった感じです」(名古屋市内の中学生教師)
SNS上では教師全体を一括りにして非難するような意見も少なくない。しかし、実際の教育現場で子どもと真摯に向き合い、日々奮闘している教員たちは、こうした風潮に対して強い憤りを抱いている。今回はそんな現役教師たちに取材を行った。
「『小学生に興奮したことある?』『教え子を盗撮したいと思ったことある?』なんて、冗談のつもりで言われたことは何度もあります」そう語るのは、東京都の公立小学校に勤務する30代男性教員。
「現場では真面目に子どもと向き合っている先生がほとんどなのに、一部の不祥事のせいで『教師=ロリコン・変態』という目で見られるのは本当に心外です」
教育行政の不備が現場を苦しめる
教師からのこうした怒りの声が多く寄せられる中、女子児童の盗撮画像を“教師グループ”のSNSで共有したとして6月23日に逮捕された、小学校教員・小瀬村史也容疑者(37)と同じ横浜市内の小学校に勤務している20代男性教員はこう話す。
「私はもともと東海地方で教員をしていて、数年前に横浜市に転勤しましたが、今回の事件については全く知りませんでした。ただ、横浜市の教育環境は明らかに他地域より劣っていると感じます」
横浜市内の小学校に勤務する男性は、授業中のICT環境についてもこう嘆く。
「以前の勤務先では、Apple TVなどを使って無線で教材映像を映せました。でも横浜市では、いまだに有線でHDMI接続しかできず、ケーブルの不調で映像が見られないことも多い。設備の古さが現場の足かせになっています」
その結果、教師が私物のiPadやスマホを使って授業準備をするのが当たり前になっていたという。
「でも、今回の事件の影響でそれすら使えなくなりました。まじめに子どもと向き合っていた教師の努力が、一部の加害者のせいで否定されてしまうことに腹立たしさを覚えます」
さらに、教員の過酷な労働環境についてもこう続けた。
「横浜市の中区や西区は本当に忙しいです。私の知人は月70時間を超える残業をしていましたし、私自身も深夜0時まで学校にいることがよくあります。東海地方では毎日定時で帰れていたのに……。
今回のような事件は、こうした過重労働の中で教師の心が病んでしまった結果かもしれません。環境が改善されない限り、再発のリスクはなくならないのではないでしょうか」
スマホでの撮影は当たり前? 教育現場の“緩さ”
今回の取材で複数の教員が口にしたのは、「スマホでの撮影」の常態化だ。
「私の勤務先では、行事だけでなく、日常の授業風景も先生が自分のスマホで撮るのは“当たり前”になっていました」そう語るのは、30代男性教諭だ。
「学校には共用のタブレットもありますが、古くて扱いにくい。結局、撮り慣れていてすぐに共有できるスマホが一番便利なんです。
私物の端末で児童の写真を撮影・保管することには、情報管理やプライバシーの観点から大きなリスクがあることはわかっているんですが、多くの先生が忙しすぎて、そこまで気が回らないのが現状です」
教師が撮影した写真は、スライドショーや教室掲示、期末の思い出プレゼントなどに活用されることが多く、目的はあくまで“記録”や“教育的活用”だという。
教師の質が下がっている? 教師が目撃した“許されない言動”と採用の現実
「こんなこと言いたくないですが、教員の“質の低下”は否定できません」そう話す30代男性教員は現場の実情を明かす。
「今、小学校教員の採用試験は自治体によっては倍率1倍を切っています。つまり、誰でもなれてしまうというような状態。教育委員会も“猫の手も借りたい”という状況なので、質よりも人手を確保することが優先されてしまっているのが現実です」
採用ハードルの低下は、志や適性に欠ける人材を呼び寄せかねない。名古屋市に勤務する20代の女性教諭は、小学校教員の飲み会で目にした光景をこう語った。
「高学年の女子児童の胸の大きさについて、男性教師同士が真剣に『あの子は何カップだ』『いやもっとあるだろう』などと話し合っていて、驚きました。冗談のつもりだったのでしょうが、そんな目で子どもを見たことがあるという事実にショックを受けました」
また、別の女性教諭は、大学時代のある発言が忘れられないという。
「“小さい女の子が好きだから、小学校の教師になりたい”と同級生の男子学生が言っていたんです。あれが本気だったのか冗談だったのかはわかりませんが、教員になる動機としては恐ろしすぎます」
教員免許や採用試験では、こうした人物を見抜く方法は現状ない。どんなに制度的な網を張っても、素質や内面の動機までは見抜けないという現実がある。
現場での取り組みと、これからできること
では、現場ではどのような取り組みが行われているのだろうか。20代男性教諭は、子どもへの配慮の実例を語る。
「小学校高学年になると、思春期に入り子どもたちも心身ともに敏感になってきます。だからこそ、個別相談の対応も、女子児童には女性教員、男子児童には男性教員が行うようにしており、学年担任の構成も、男女バランスを意識して組まれています」
さらに、女性教員が常にそばにいる環境を整えることで、女子児童が安心して相談しやすい体制も整えているという。
こうした小さな取り組みが、子どもを守る第一歩になる。
一部の加害者の存在によって、すべての教員が疑われるような状況を変えるためにも、制度的な整備と、教育現場の透明性確保が急務だ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班