「もう、親の言葉に振り回されたくない」と思ったとき読む記事|臨床心理士が解説
03/13 21:00
親の言葉に振り回されないためのコツ
振り回される理由を知る
そもそも私たちはなぜ親の言葉に振り回されてしまうのでしょうか。そこには「所属と愛の欲求」が影響しています。所属と愛の欲求とは、家族などのコミュニティで「愛されたい」「受け入れられたい」などと感じる欲求のこと。
所属と愛の欲求を満たすため、私たちは「どうすれば親から愛されるか」を意識します。そのヒントとなるのが親の「言葉」です。私たちは自分のふるまいに対する親の言葉によって「〇〇をすれば愛される」「〇〇は嫌がられる」ということを学びます。幼少期から長年培われた習慣は、大人になっても簡単にはなくなりません。そのため、親のちょっとした言葉にも「愛されていないかも」「嫌われたかも」と大きく心が揺さぶられることがあります。
つまり、親の言葉に振り回されることは、誰にでもありえること。「どうして、こんな年齢になってまで親に振り回されているのだろう。情けない」など、自分を責める必要はないのです。
自分の感情を認める
親の言葉に心が乱れたときは、そのときの気持ちを少し見つめてみましょう。
「とても腹が立った」「軽くあしらわれて悲しかった」など、モヤモヤした気持ちを言葉にして整理するだけでも、心は少し楽になります。このように感情を言葉にすることを「感情のラベリング」といいます。
感情のラベリングには、
・ネガティブな体験によるストレスを和らげる
・感情をコントロールしやすくする
などの効果があるとされています。
そのため、親の言葉で心が揺さぶられても、そのまま振り回されるのではなく、気持ちを落ち着けて「私は本当はどうしたいのだろう」と、自分に問い直す余裕が生まれるのです。
境界線(バウンダリー)を設定する
親の言葉に振り回されないために最も有効な方法のひとつが「境界線(バウンダリー)」を意識することです。境界線とは、「自分と他者の領域を区別するライン」つまり、「『私は私、あなたはあなた』を区別するライン」を意味します。
例えば、親から「あなたの服、変だよ」など、批判的な言葉をかけられた際に、次のように考えてみます。
・「親は『変だ』と思っている。でも、私はそう思わない」
・「私が好きな服は、私が決めていい」
・「親の言葉は意見として参考にするけれど、どうするかは自分で決める」
言葉だけでも心の中で線を引くことで、過剰な影響を受けにくくなります。
最初は難しいかもしれませんが、「私は私、あなたはあなた」と意識して区別する経験を積むことで、境界線は徐々にしっかりしてきます。
自分の価値観を確認する
親の言葉に振り回される背景には、「自分の価値観が曖昧」という問題が隠れていることがあります。
「私は〇〇を大事にしたい」
「私は××が好きだ」
などの価値観がぼんやりしているため、親からの「〇〇よりこっちにしなさい」「××なんてみっともない」などの言葉に、つい「そうかも…」と心が揺さぶられ、振り回されてしまうのです。
軸となる価値観が定まっていると、一時的に親の言葉に振り回されても、元の価値観に戻ってくることができます。
上手に距離を置いて安全に対話する
「親の言葉に振り回されている」と感じる場合、親から少し距離を置き、自分のペースを取り戻すことも大事です。
例えば、以下の方法があります。
・会話の時間を短くする(例:「友達に電話するんだった」など伝え、自分のタイミングで会話を終える)
・SNSや電話の返信を遅らせる(例:LINEが来ても自分が心に余裕を持てるまで置いておく)
・深呼吸やストレッチで気持ちを落ち着ける(例:自分の心と身体のペースを取り戻し、親のペースに飲まれない)
このように自分を優先して距離を取ることを「冷たい」と感じる人もいるかもしれませんが、これは親を「拒絶する」ことではなく、お互いに安全で心地よいコミュニケーションをとるために必要なことです。
自分を褒める習慣を作る
先ほどもお話した通り、親からの言葉に振り回されるのは、「親に愛されたい、受け入れられたい」と思うから。そのため、「親の言葉に従わなければ」という気持ちが湧きおこり、本当は「しんどいな」「嫌だな」と思っていても背くことができないのです。
「親が愛してくれるかどうか」から解き放たれるには、自分で自分を愛する力を育てることも重要です。
日々の小さな成功や努力を、自分の言葉で認める習慣を持ちましょう。
例えば、次のような声かけです。
・「今日もよく頑張った」
・「自分にとって納得いく判断ができた」
・「自分の気持ちを大切にできた」
自分の価値を自分で肯定することで、親の言葉に揺さぶられにくくなります。
まとめ
「もう親の言葉に振り回されたくない」と感じたとき、それは自分の人生を生きたいという自然なサインです。
自分の心を大切にし、少しずつ親の影響から距離を置きながら、自分らしい生き方を築いていきましょう。
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。