有名店の名前で客集めか、「銀座八五出身」名乗るラーメン店に本家が注意喚起 「元◯◯の料理人」は本当でなくてもOK?

写真はイメージです(metamorworks / PIXTA)

「◯◯出身」「あの名店で修行」──。飲食店のプロフィールや看板で、こうした“経歴アピール”を見かけることは少なくありません。

ところがラーメン店「銀座八五」は3月10日、公式Xで「銀座八五出身」「二番手」などと自称する店舗が複数確認されているとして、注意喚起をおこないました。アルバイトなど短期の在籍者が、事実と異なる経歴を名乗って営業している可能性があるといいます。

同店はこれらの店舗について「当店の技術を正式に継承した事実はございません。お客様におかれましては、ご注意いただけますと幸いです」と説明。あわせて、公式に運営や技術協力をしている店舗も明記しました。

もし、実際にはほとんど関係がないのに、有名店の名前を掲げて集客していた場合、法的な問題はないのでしょうか。今井俊裕弁護士に聞きました。

●ただちに違法とは限らないケースも

──飲食業界では、「◯◯出身」「◯◯で修行」「元◯◯の料理人」といった経歴を掲げて営業する店が少なくありません。こうした表示は、どのような場合に法的問題が生じる可能性があるのでしょうか。

一定の地域で広く知られている店名や営業表示、あるいはそれに似た表示を無断で使用し、あたかもその店による営業や商品・サービスであるかのように消費者に誤認させる方法で営業する行為は、「不正競争行為」として差止めや損害賠償の対象となります。

こうした広告手法はフェアとはいえず、消費者に誤解を与えるおそれがあります。また、本来その店名で営業している事業者にとっても、信用や売上に影響を及ぼしかねないため、不正競争防止法の規制対象とされています。

ただし、日本では原則として自由競争が認められており、すべてのケースが違法になるわけではありません。問題となるのは、「広く知られた営業表示を使い、その店の営業であると誤認させるようなもの」です。

ここでいう「広く知られた営業表示」とは、潜在的にその店の消費者となり得る人がいる一定の地域内、つまり商圏内において広く認識されている表示を意味します。

たとえば、「首都圏および横浜近辺」や「北海道内」など、特定の地域の範囲で広く知られている場合です。その商圏内で営業表示を無断で使用し、営業主体を誤認させるような行為は、不正競争行為に該当する可能性があります。

ただし、たとえば「◯◯出身」「◯◯で修行した」「元◯◯にいた料理人」といった表示だけでは、不正競争防止法上の不正競争行為にあたらない可能性が高いでしょう。

一般の消費者も「有名店とは別の店が営業している」と理解することが多く、営業主体を誤認させる表示とまでは認められないでしょう。

●アルバイトなど短期間でも在籍していた場合は?

──アルバイトや数カ月だけ働いたなど、短期間でも在籍していた場合でも、特定の店名を挙げて「◯◯の味を継承」「◯◯直伝」などと表示した場合、元の店舗の信用やブランドを利用したとして、法的責任が問われる可能性はありますか。

仮にその店に在籍していた事実があったとしても、たとえば厨房ではなく、在籍期間のすべてをフロアスタッフとして勤務していた場合などに「元◯◯にいた料理人」と表示すれば、事実と異なる内容となり、虚偽表示と評価される可能性があります。

ただし、このような表示があったとしても、ただちに「その有名店が営業している店舗である」と誤認させるものとは言い切れないため、不正競争防止法上の不正競争行為に該当すると判断される可能性は必ずしも高くありません。

●「◯◯の味を継承」という表示には要注意

──いずれも違法性は高くないと考えてよいのでしょうか。

「◯◯の味を継承」「◯◯直伝」などと表示する場合には注意が必要です。

こうした表示を見た消費者は、元の有名店から一定の評価を受けて、いわゆる「のれん分け」などの形で承諾を得たうえで表示しているのではないかと受け取る可能性があります。

そのため、表示内容や具体的な事情によっては、不正競争防止法の規制対象とまではいえなくても、一般的な不法行為(民法709条)に該当する可能性が検討される余地があります。ケースによっては損害賠償責任が生じることもあり得るでしょう。

●全国的に有名な店名を使う場合は違法が高くなる

──営業主体を誤認させる表示であることが前提なのでしょうか。

一定の地域内で知られているどころではなく、全国規模で有名な営業表示を冒用した場合には、たとえ消費者に誤認が生じなかったとしても、不正競争行為に該当する可能性があります。

「冒用」とは、他人の名称や表示を無断で利用することを意味します。裁判例では、誰もが知っている日本を代表する大企業の名称や、超有名ファッションブランドなどを無断で使用したケースが問題になっています。

このような場合、仮に消費者が営業主体を誤認しなかったとしても、不正競争行為違反と評価される可能性があります。

さらに、商標登録された商標を使用した場合には、別途、商標権侵害の問題も生じます。

【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html

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