紫式部『源氏物語 三十七帖 横笛』あらすじ紹介。恐ろしいほど美しい息子の薫に、将来を不安視する源氏。さらに出生の秘密を探られ…

古典文学の名著『源氏物語』を読んだことはありますか。教科書に掲載されていたり、作者・紫式部の人生がドラマ化されたりして、興味がある方も多いかもしれません。どんな物語なのかを知ることができるよう、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第37章『横笛(よこぶえ)』をご紹介します。

『源氏物語 横笛』の作品解説

『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

 柏木の死から1年が経ち、遺品である横笛を手にした夕霧。死の間際に柏木から打ち明けられた“源氏から買った恨み”と夢で柏木が語った“笛を子孫につないでほしい”という言葉から、やはり薫が柏木の子であると直感します。これから始まる薫の物語で、主役を支える脇役・匂宮も登場し、『源氏物語』は世代交代に向かいます。堅物だった夕霧が浮気に走るサイドストーリーも面白い『横笛』巻です。

これまでのあらすじ

 紫の上の看病で源氏の不在がちとなった隙を突いて、柏木が女三の宮と強引に関係を結んだ。罪の意識に苛まれた柏木は病床に伏し、女三の宮は薫と呼ばれる男の子を出産したが、不義の子だと知っていた源氏は薫の誕生を喜べずにいた。そんな源氏のよそよそしい態度に耐えられず女三の宮は出家をし、それを知った柏木の容態は悪化し後のことを親友の夕霧に託し亡くなった。

『源氏物語 横笛』の主な登場人物

光源氏:49歳。正妻として迎え入れた女三の宮の出家を許す。

女三の宮:23〜24歳。柏木との不義密通の罪に苛まれ出家した。

薫:1~2歳。源氏と女三の宮の子として生まれるが、実の父は柏木。

夕霧:28歳。源氏の息子。故柏木の妻・落葉の宮に恋心を抱く。

雲居雁:30歳。夕霧と結婚し、子育て真っ最中。

落葉の宮:朱雀院の娘で、女三の宮の姉。夫の柏木に先立たれ、未亡人となる。

『源氏物語 横笛』のあらすじ​​

 柏木の一周忌の法要が盛大に営まれた。源氏は密かに薫の分として黄金百両を包み、夕霧も落葉の宮を熱心に見舞った。事情を知らない柏木の父は恐縮して喜び、若くして亡くなった息子の死を惜しんだ。

 朱雀院は降嫁した娘2人(落葉の宮、女三の宮)が憂き目にあうのを辛く思い、俗世にいたころから可愛がっていた女三の宮のことは特に気に掛けていた。朱雀院から山で採れた筍が贈られてきた日、源氏は女三の宮を見舞った。尼姿ではあるがやはり幼子のようで可愛らしいと思われる女三の宮との几帳を隔てた対面を残念に思った。1歳を過ぎてよちよち歩きを始めた薫を抱き上げて、柏木にも女三の宮にも似ていない気品のある顔立ちに胸騒ぎを覚える源氏だった。

 秋の夕暮れに、夕霧は故柏木の妻・落葉の宮とその母の一条御息所を見舞った。普段幼い子どもたちで賑やかな自邸に比べ、静かで風情ある住まいに心惹かれた夕霧が和琴を弾き、合奏をするよう促すと、落葉の宮も合わせてほんの少し掻き鳴らした。次の訪問を待っていてほしいと言い残して夕霧が退出しようとすると、一条御息所から柏木遺愛の横笛を渡された。

 夜が更けて夕霧が自邸に戻ると、落葉の宮への浮気心を知った妻・雲居雁は格子を下ろし寝たふりをしていた。夕霧が子どもたちの寝相を横目に落葉の宮に思いを馳せてうたた寝をしていると、まどろみの中で柏木が夢枕に立ち、その横笛は夕霧ではなく別の人に渡してほしいと言った。誰に渡せば…と問おうとすると、子どもの泣き声で目が覚め、幼子の世話に追われる雲居雁に皮肉を言われてしまう。

 翌日、夕霧が六条院を訪ねると、源氏は明石の女御の部屋にいた。匂宮(明石の女御の三の宮)と一緒に遊ぶ薫を見て、皇子たちにはない気品と風格があり、やはり柏木によく似ていると感じた。薫の出生の真相を知りたいと、源氏に昨晩の夢の話を持ち出すと、その笛は自分が預かるという源氏だが、肝心なところで話はそらされてしまう。源氏は、勘が鋭い夕霧のことだから、思うところがあるのだろうと警戒した。

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