【展覧会レポート】久留米市美術館「美の新地平―石橋財団アーティゾン美術館のいま」展に行ってきた!
03/17 07:00
「美術館に行ってみたいけど、話題の展覧会は東京ばかり……」「でも遠征するのはハードルが高い」なんて感じている方は多いのではないでしょうか? そんな方にもおすすめなのが、福岡県の久留米市美術館で2026年2月14日(土)~5月24日(日)開催されている「美の新地平―石橋財団アーティゾン美術館のいま」展です。 久留米市美術館はかつて「石橋美術館」という名称で親しまれていました。その歴史的なつながりがあるからこそ、アーティゾン美術館の超豪華なコレクションが、久留米にまとまった形でやってきています。
【画像をみる】【展覧会レポート】久留米市美術館「美の新地平―石橋財団アーティゾン美術館のいま」展に行ってきた!今回は、わたしが実際に足を運んで感じた「分からないからこそ楽しい」美術鑑賞の魅力と、心ときめいた作品たちについてレポートします!2026年春のお出かけの参考になればうれしいです。
噴水と彫刻がお出迎え!久留米市美術館への道のり
美術館へのアクセスはシンプル。西鉄久留米駅から歩いて約15分ですが、道なりにほぼ真っ直ぐなので、地図を片手にのんびり歩けば土地勘がなくても迷わず到着できます。JR久留米駅からはバスで約15分、西鉄久留米駅からもバスで5分ほど。有料駐車場もあるので、わたしが行った日は車で来ている方が多い印象でした。
美術館の敷地に入ると、清水多嘉示の彫刻《みどりのリズム》がお出迎えしてくれます。その奥には円形の噴水、通称「ペリカン噴水」があり、水面がキラキラと輝いていました。園内の庭園には季節の花々が植えられていて、散歩を楽しむ人も多く、とても和やかな時間が流れていきます。展示室に入る前から、開放的な空気に癒やされますよ。
チケットを購入して入場すると、作品との距離の近さに驚きました。ほとんどが至近距離で鑑賞できる状態だったので、絵の具の厚みや筆の勢い、キャンバスの質感までもが手に取るように分かります。「この色は後から重ねたのかな」「ここで筆を止めたのかな」と、画家の息遣いまで伝わってきそうで、作品と対話しているような贅沢な感覚に浸れました。
「正解を求めなくても楽しめる」と抽象画が教えてくれた
今回の展示では抽象画が多くチョイスされています。そこで「抽象画って何を楽しめばよいか分からない……」と不安に思う方もいるかもしれません。わたしも同じ気持ちでしたが、作品の前に立ってみると、その不安はすぐにワクワクへ変わりました。

キャプション(説明文)が少なめだからこそ、自分だけの想像力がどんどん膨らんでいくんです。「この色の組み合わせはポジティブな感じがする」「似た図形が連続していて面白い」など、直感だけで楽しんでも何も問題ありません。もし正解や事実が知りたくなったなら、帰り道にスマホで調べれば大丈夫。その場で「正解を分かっていなきゃ」と身構える必要はないと思います。
分からないという状態さえも楽しみの1つ。芸術は必ずしも知識で観るものではなく、解釈の幅を許されている自由なものなんだと改めて気づかされました。
わたしがときめいた6作品
展示されている80作品のうち、わたしが特に心を動かされた作品をご紹介します。
ヴァシリー・カンディンスキー《自らが輝く》

今回の展覧会のアイコン的存在です。幾何学的な図形とカラフルな色彩は、まるで踊っているようで、観ているだけで心が浮き立ちます。日々の活力をもらえるような、生命力にあふれた作品でした。
ポール・セザンヌ《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》

以前、この絵に関する記事を執筆したことがあり、ずっと憧れていた1枚です。晩年のポール・セザンヌにとって創作の原点ともいえるサント=ヴィクトワール山。目の前にした瞬間、「セザンヌの愛した風景が今ここにあるんだ」と大興奮しました!画家と自分の人生が、絵画を通じて交差したような不思議な感覚。まさに「歴史を目の前にしている」という感動を味わえました。
マリー・ブラックモン《セーヴルのテラスにて》

作品の前で足を止めると、心地よい太陽の光が、絵の向こう側から差し込んでいるようで、思わずうっとり。描かれている人物たちはどこかぼんやりしていて、「日差しがあたたかくて眠たいのかな?」「考えごとをしているのかもしれない」なんて考えます。
ドレスのピンク色が愛らしくて印象に残っており、展覧会の直後はピンク色のものばかりが気になってしまいました。
パウル・クレー《負け試合》

よく見るとキャンバスの糸のほつれが分かる、不思議な質感の作品です。一度完成したものを解体して新しい作品にするというパウル・クレーの手法に、「もったいなくてわたしにはできない!」なんて驚きつつ、彼の飽くなき好奇心に刺激を受けました。
藤島武二《黒扇》

重要文化財をこんなに間近で観られるなんて!この作品は、藤島武二が最期まで大切にしていた個人コレクションで、亡くなる直前、久留米市美術館の前身である石橋美術館の建設・寄贈者の石橋正二郎氏へ託されたそうです。
人間同士の深い信頼があったからこそ、今わたしはこの絵に出会えた。美術館に名作があるのは当たり前ではなく、奇跡の連続なんだと、背筋が伸びる思いでした。
白髪一雄《昏杜》

下から見上げると、絵の具が驚くほど分厚く盛り上がっています。「どうやって塗ったの?」と不思議でしたが、なんと足で描く「フットペインティング」という技法なのだとか。黒い絵の具の躍動感が、気持ちをシャキッと引き締めてくれました。
ミュージアムショップやカフェで余韻に浸るのも楽しい
展示を堪能した後は、お楽しみのミュージアムショップへ向かいました。展示室で気に入った作品がポストカードやマグネットになっていると、うれしくてついつい買いすぎてしまいます......!
わたしのお気に入りの楽しみ方は、ポストカードを部屋の壁に飾り、自分だけの「ミニ展示室」にすること。自分へのお土産として、あるいは大切な人へのお裾分けとしてグッズを選ぶ時間は、展覧会の楽しさを持ち帰るようなひとときですよ。
そして、鑑賞後の締めくくりにぜひ立ち寄ってほしいのが、カフェ&ギャラリーショップ「楽水亭」です。ここでは美しい日本庭園を眺めながら、ゆったりと食事やお茶を楽しめます。ちなみに「楽水亭」は石橋正二郎氏の言葉「楽山愛水」にちなんだ名前で、美しい自然を愛していたことが伝わってきます。
2月某日に訪れたわたしは、季節のケーキとシーズナブルティーをいただきました。サクサクのクッキー土台にホワイトチョコのムースがのせられ、甘酸っぱい梅ジャムが包まれた逸品でした!季節のケーキを楽しみに再訪すること間違いなしです。
お茶を飲みながら、「あの作品やっぱり素敵だったな」「この画家についてもっと知りたい」と、展覧会の目録を見直したり調べ物をしたり……。日常の喧騒を忘れて、自分の感性と向き合う一人時間は、何物にも代えがたい贅沢な時間でした。
まるで展覧会のハシゴ気分!久留米でお気に入りの作品に出会おう
「美の新地平―石橋財団アーティゾン美術館のいま」展は、時代も地域も異なる名作が集結していて、まるでいくつもの展覧会をハシゴしたような、ものすごい満足感がありました。もし抽象画だけの展覧会だったら行く勇気が出なかったかもしれません。でも今回こうして出会い、面白いと感じられたことは、わたしにとって大きなラッキーでした。
みなさんもぜひ、久留米市美術館で「分からない」を楽しみ、自分だけのお気に入りを見つける旅に出かけてみませんか?きっと新しい視点や心地よい刺激が、日常に彩りをプラスしてくれるはずです。
展覧会情報
久留米市美術館 開館10周年記念展「美の新地平―石橋財団アーティゾン美術館のいま」
会期:2026年2月14日(土)~5月24日(日)
休館日:毎週月曜日(ただし2月23日、5月4日は開館)
開館時間:10:00‒17:00(入館は16:30まで)
料金:一般1,500円(1,300円)、シニア1,200円(1,000円)、大学生以下無料
※前売券は一律1,200円。
※()内は15名以上の団体料金、シニアは65歳以上。
※上記料金で、石橋正二郎記念館もご覧いただけます。
※身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳又は療育手帳等の交付を受けている方とその介護者1名は、無料となります。
会場:久留米市美術館
公式サイト:久留米市美術館 開館10周年記念展「美の新地平―石橋財団アーティゾン美術館のいま」




