なぜ「第三京浜」は、あんなに走りやすいのか?――35kmを結ぶもうひとつの幹線、「首都高」「東名」と並ぶ回廊の実像とは
03/29 05:51
首都圏二大都市の近接構造

日本の市で最も人口が多いのはどこか――2026年3月時点、東京23区は約995万人と1000万人に迫る規模に達している。これに続く神奈川県横浜市も、同時点で約377万人を抱える。いずれも首都圏に位置し、東京駅と横浜駅の距離は車でおよそ35km。国内で上位に並ぶ人口規模の都市を結ぶこの区間は、経済活動の土台として日々使われている。近接するふたつの拠点が相互に働きかけ、価値を高め合う関係が続いているともいえる。
この区間を支える道路網としては、都市高速の首都高速道路と幹線である東名高速道路がまず挙がる。首都高には1号羽田線・横羽線、湾岸線の2系統があり、大都市間の移動を受け持つ。これらに加え、見過ごせない役割を担ってきたのが
・第三京浜道路
・横浜新道
だ。第三京浜は東京都世田谷区の玉川インターチェンジ(IC)から横浜市神奈川区の保土ヶ谷ICまでを結ぶ全長16.6kmの路線である。横浜新道は自動車専用ではないが、国が管理する無料区間とNEXCO東日本の有料区間で構成され、神奈川区から戸塚区へとつながる。第三京浜は2025年に開通60年、横浜新道は2024年に50年を迎えた。半世紀を超える運用の積み重ねのなかで、社会にもたらした累計の経済効果は約4.8兆円にのぼる。
この数字は、ふたつの都市の動きを滞りなくつなぎ、その力を引き出してきた結果でもある。筆者(都野塚也、ドライブライター)自身、仕事や日常で使う機会があるが、走りやすさに配慮されたつくりと使い勝手の良さは印象に残る。第三京浜と横浜新道がどのような価値を生んできたのか、今回は見ていこう。
三路線の役割分担

東京と横浜のあいだには、首都高、東名、第三京浜という三つの高規格道路が並行して走る。首都高は横浜駅周辺やみなとみらい、新横浜といった拠点を細かく結び、市内外の移動を受け止めている。対して東名は、東京から愛知方面へとつながる広域物流の幹線だ。横浜市内の横浜青葉IC、横浜町田ICはいずれも通過点の性格が強く、広い範囲を移動する流れの途中に置かれている。
これに対し、第三京浜は国道15号や国道1号を補い、横浜新道もまた国道1号のう回路として働く。目を引くのは、
「走りやすさ」
を優先したつくりだ。多くの区間で片側3車線が確保され、本線でも最低2車線が保たれている。この幅の余裕が運転時の判断にゆとりを生み、速度が落ちやすい場面でも流れの乱れを抑える。首都高や東名と比べて混雑が少ないのは、こうした構成が車の動きを安定させているためだろう。他の路線に支障が出た際には代替路としても機能し、交通の滞りを和らげる役目も持つ。
2017年の横浜北線、2020年の横浜北西線の開通を経て、この路線の位置づけは一段と重みを増した。首都高の横羽線や湾岸線、東名とつながり、広い範囲の交通を支える結節点となっている。つながりが増えるにつれて使い勝手も高まった。港北IC周辺に物流施設や工場が集まるのは、こうした安定した交通条件が拠点選びに織り込まれているためでもある。
物流や通勤の車が多く行き交う一方で、バスなどの公共交通は多くない。都市間の実務的で機動的な移動に軸足を置いた道路であることが、そこから見えてくるのだ。
累計利用と交通量拡大

第三京浜と横浜新道は、開通以来、多くの車の流れを受け止めながら、地域の土台を支えてきた。2024年までの累計利用台数は、
・第三京浜:約27億台
・横浜新道:約19億台
に達する。開通後50年で、東京と横浜のあいだの交通量は約6割増えた。利用者の約9割は一般車で、そのうちおよそ4割が沿道の市町村間の移動を占める。この道が日々の暮らしや仕事に深く入り込んでいる様子がうかがえる。
累計で約4.8兆円にのぼる経済効果は、移動の効率が生む価値の大きさを物語る。とりわけ金融や不動産、物流が全体の9割を占める点は重い。沿道の商業も伸びており、大型小売店舗数は約47倍、販売額は約18倍に増えた。移動時間が縮むことで、一定時間内に届く範囲が広がり、商圏が外へ広がったためだ。
加えて、不測の事態への備えとしても機能している。2022年に東名高速で通行止めが起きた際、約2割の車が第三京浜へ流れた。こうした動きは、物流の滞りを抑える受け皿として働いていることを示す。
休日になると、利用の約4割は観光や行楽が占める。横浜新道からつながる藤沢市の江の島では、観光客数が2024年までに約1.6倍に増えた。都内の目黒区から向かう場合、一般道と比べて約53分短縮される。この差が人の動きを押し広げ、各地での消費につながっている。渋滞の少なさが生む時間の余裕が、地域の動きを下支えしているともいえるのだ。
老朽化対応と更新投資

これまで多方面で役目を担ってきた第三京浜と横浜新道は、今後も地域の暮らしと広い範囲の移動を支える道として使われていく。このふたつの路線は、高規格道路のなかでも走りやすい環境が整っている。その強みをどう生かすかが、首都圏、ひいては日本全体の成長を下支えする力になるだろう。
一方で、避けて通れないのが老朽化の問題だ。全線開通から半世紀以上が過ぎ、路面や関連する施設の傷みは進んでいる。今後は大規模な改修による補修や更新が欠かせない。こうした取り組みは、安全性と使いやすさを保ち、都市の生産力を落とさないために必要になる。利用者の理解も求められる場面が増えていくだろう。
第三京浜は首都高や東名と直接つながったことで、交通網のなかでの存在感を強めてきた。沿道では人口の増加や都市機能の集まりが進み、先行きは交通量の増加も見込まれる。首都圏全体の交通量が横ばいからやや増える流れのなかで、この路線が安定して働き続けることは、他の道路の混雑を和らげ、地域全体の移動の効率を底上げすることにつながる。
高速道路は、車が通るための場にとどまらず、経済活動と暮らしを支える土台へと役割を広げてきた。とりわけ第三京浜と横浜新道は地域との結びつきが強い。この性格を踏まえつつ機能を高めていくことが、今後の成長を支える流れになっていくはずだ。
時間短縮が生む経済効果

累計4.8兆円にのぼる経済効果は、第三京浜と横浜新道が移動を支えるにとどまらず、地域全体の価値を押し上げてきた積み重ねでもある。その背景にあるのは、余裕を持たせた3車線による走りやすさだ。
渋滞が少なく、所要時間が読みやすい――この確かさが、沿道の大型店舗数を47倍に伸ばし、販売額を18倍へと引き上げた。目黒区から江の島まで53分短くなるという差は、人の動ける範囲を広げ、新たな消費を生み出す力を持つことを示している。
開通から60年が過ぎ、いまは補修や更新が避けて通れない段階にある。これを維持のための作業として片づけるのではなく、次の半世紀に向けた投資として捉え直す必要があるだろう。東京と横浜というふたつの拠点を結ぶこの路線が持つ力を、あらためて見直す時期に来ている。