東日本大震災「節電案内の張り紙」がいまだに……なぜ「日暮里駅前の複合施設」は、再開発15年超でも街の核になれないのか?

日暮里駅周辺の概要

ステーションガーデンタワーの2階と3階に残る張り紙。筆者撮影(画像:宮田直太郎)

ステーションガーデンタワーの2階と3階に残る張り紙。筆者撮影(画像:宮田直太郎)

 荒川区の日暮里駅は、山手線、京浜東北線、常磐線、京成線、日暮里・舎人ライナーが交わる乗り換え駅で、通勤・通学客や成田空港行きの旅行者で賑わう。

 西口には、谷中方面へ続く「夕焼けだんだん」を中心に、昔ながらの店舗が残る一方、東口には繊維製品を中心とした問屋街が広がり、買い物客も絶えない。

 駅前には2000年代後半から、ステーションポートタワー、ステーションプラザタワー、ステーションガーデンタワーの3棟の高層ビルが建ち並び、これらはまとめて

「サンマークシティ」

と呼ばれる。しかし、再開発地区として期待された一帯には、思ったほど活気が見られない場所もある。

 本稿では、日暮里駅東口のサンマークシティ再開発の経緯と、現状の課題について整理する。

駄菓子屋問屋街の歴史

筆者が撮影した写真(画像:宮田直太郎)

筆者が撮影した写真(画像:宮田直太郎)

 日暮里駅東口にはかつて、菓子類を専門に扱う問屋街も存在した。規模は160軒以上に上り、東京都内だけでなく群馬や栃木など関東全域から多くの卸売業者や小売業者が訪れる、日本でも最大級の駄菓子屋問屋街だった。

 昔ながらの木造建物で駄菓子を販売する光景は、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」などにも描かれ、レトロな街としても知られた。しかし、駄菓子屋や製造元の後継者不足などにより多くの店が閉じ、1990年代以降は次第に活気を失っていった。

 低層の木造建物が多いこともあり、地震や火災への防災上の不安が残る地域でもあった。核となる施設がないため、街全体に活気をもたせることも難しかった。

 こうした背景から、荒川区は2000年前後、日暮里駅東口前の問屋街付近を「ひぐらしの里」と名付け、日暮里・舎人ライナー(2008〈平成20〉年開業)の導入に合わせた再開発に着手した。西側のステーションポートタワーは2007年5月、中央の商業・公益施設を備えたステーションガーデンタワーは2008年2月、北側のステーションプラザタワーは2009年10月に開業。

 3棟のタワーからなる再開発地区はサンマークシティと名付けられ、日暮里の新たな街の核として期待された。

人の動きの課題

日暮里駅前地区事業位置図(画像:荒川区)

日暮里駅前地区事業位置図(画像:荒川区)

 しかし、日暮里の核として期待されたサンマークシティは、現在も人がまったくいないわけではないが、繊維街や夕焼けだんだん商店街の賑わいには遠い。原因のひとつは、日暮里駅からの動線の複雑さだ。

 サンマークシティの3棟はいずれも駅とペデストリアンデッキで接続されているものの、日暮里・舎人ライナーの駅が直線上に設けられた影響で、高架橋は「コの字型」に延びている。その結果、ビルはいずれも正面玄関からではなく、横手から入る構造となり、入り口がわかりにくい印象を与えている。

 特に中央部のステーションガーデンタワーに階段を使わず向かう場合、駅ロータリーを越え、一度西側のステーションポートタワーに向かい、その横を通って回り込む必要がある。初めて訪れる人にとっては直観的に進むのが難しく、迷うことは避けられないだろう。

 ステーションガーデンタワーには、日暮里に拠点を置くジーンズメーカーのエドウィンや、学習塾、飲食店、スーパー、フィットネスジムなどが入居している。他の2棟もテナントは比較的埋まっている印象だ。

 ただ、買取専門店や不動産店舗など、下層の人通りの多い場所に置くには不向きなテナントも散見される。さらに、各店舗はゾーンごとにまとまっているわけではなく、3棟のビル内に散在しており、下層階だけを見れば雑居ビルのような印象を受ける。行政が想定する

「街の核」

と呼べる存在には、現状では至っていない。

建物の古さ

サンマークシティ周辺の様子(画像:(C)Google)

サンマークシティ周辺の様子(画像:(C)Google)

 またサンマークシティは再開発から15年以上が経過し、3棟それぞれに古さが目立つようになっている。グーグルの口コミを見ると、「駅に近く便利」「飲食店の料理が美味しい」といった声がある一方で、

「トイレが清潔でない」
「傷だらけ」

といった指摘も散見される。筆者(宮田直太郎、フリーライター)もトイレを利用した際、ドアの作りなどに古さを感じ、建物の管理が十分か不安を覚えた。

 特に目を引くのは、ステーションガーデンタワーの2階と3階に残る張り紙だ。

「東日本大震災(2011年3月)による電力不足の際の節電案内」

が、いまだに貼られているのである。執筆時点(2026年3月)から15年以上前の情報が残っていることに驚き、商業施設棟を管理する組合に問い合わせようとしたが、詳細は確認できなかった。

 入居するテナントに話を聞くと、「管理組合の指示に従っているため詳しくはわからない」と前置きしたうえで、

「節電要請の際、一部の電球を消した。以降はLED化の影響もあり、そのままの数で運用している。張り紙もその延長線上にあるのではないか」

と説明してくれた。実際、建物内には点灯していない箇所もあり、東日本大震災以降、節電を意識した運用が続いている可能性は高い。

節電による暗さ

筆者が撮影した写真(画像:宮田直太郎)

筆者が撮影した写真(画像:宮田直太郎)

 この節電策について、筆者はあまり好ましく思えない。コスト面では合理的だが、建物が暗いため店が開いているか一目でわかりにくい印象を受ける。実際、遠くから撮影すると内部はかなり暗く見える。空きテナントがなくても、本当に店があるのかと不安にさせるほどだ。

 ステーションガーデンタワーのグーグルコメントにも、

「テナントが入る2階と3階がとにかく暗い」

との声が見られる。集客を考えれば、何らかの対策が必要だろう。日暮里では隣駅の西日暮里駅周辺で再開発が進んでいる。2031年までに、

・46階建ての高層マンションを中心とした住居棟
・地下3階地上10階建ての商業施設棟

が整備される予定だ。商業施設には大規模ホールや屋上庭園も設けられ、本格的なものとなる。完成すれば、サンマークシティの古さは相対的に目立つ可能性が高い。

 西日暮里駅周辺の再開発による空洞化を防ぐには、サンマークシティの各建物も早急にリニューアルに着手する必要がある。

特徴ある店舗

筆者が撮影した写真(画像:宮田直太郎)

筆者が撮影した写真(画像:宮田直太郎)

 今となっては古さを感じ、少し入りにくい雰囲気もある日暮里駅東口の再開発地区サンマークシティ。だが、ステーションガーデンビルをはじめ、残ったテナントは今も元気に営業している。

 なかでも目を引くのが、ステーションガーデンビル2階の「大屋商店」だ。同店はかつてこの地に数多くあった問屋のなかで唯一残った店舗で、箱詰めされた駄菓子が昔の菓子問屋街の賑わいを伝えている。懐かしい玩具も販売しており、ブリキの乗りもの玩具は乗り物好きには必見だ。

 東海道新幹線の100系や700系、東海道線・東北本線で活躍した211系、日本航空のジャンボジェットなど、東京から姿を消した車両が揃う。筆者も子どもの頃を思い出し、700系の玩具を購入してしまったほどだ。

 また、日暮里を拠点とするエドウィンがステーションビル4階に店舗を構え、多国籍な客層に対応するように、ビル内にはビルマやインド、中国などの外国料理店も揃っている。

下層階の個性

筆者が撮影した写真(画像:宮田直太郎)

筆者が撮影した写真(画像:宮田直太郎)

 一見すると都心によくある駅近マンションのようだが、下層階のテナントには随所に日暮里らしさが残っているのが特徴だ。再開発組合も、こうした個性的な店を中心に積極的に宣伝し、賑わいを維持してほしいところである。

サンマークシティは駅からやや離れた立地だが、日暮里の歴史や街の特色を感じられる貴重なビルと言える。興味がある人は、ぜひ足を運んでみてほしい。

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