プジョーの人気SUV「3008」はなぜ美しく変身? テンションが上がるモダンなインテリアは必見! マイルドハイブリッドの気になる走りとは
07/23 21:40
クーペSUVを思わせる美しいフォルムへと生まれ変わったプジョーのクロスオーバーカー「3008」。期待のマイルドハイブリッドをパワートレインのラインナップに加えた新型は、先進的で心地いいインテリアや“らしさ”満点の走り味など、多彩な魅力を備えた注目の1台です。
クーペSUV風のルックスとカジュアルなインテリアが魅力的
本記事でフォーカスするプジョー「3008」は、ハッチバックである「308」の派生モデルとして誕生したステーションワゴンとSUVのクロスオーバーカー……というのが、フランス車好きやプジョーファンの間では常識でした。
「でした」と過去形で紹介したのは、フルモデルチェンジを果たした新型「3008」はSUVであることに変わりはないものの、もはやステーションワゴンのような雰囲気を感じられなくなったからです。
新型の雰囲気が従来モデルから大きく変化した理由、それは、リアゲート回りの造形にあります。従来モデルは、リアウインドウが垂直に近い角度で立っており、ワゴンを思わせるルックスだったのに対し、新型のそれは大胆に寝かされ、まるでクーペSUVのようなフォルムへと変身しています。
プジョーのアイデンティティともいえる、ライオンの爪あとをモチーフにしたLEDデイタイムラインイングライトや、立体造形となった3本のリアLEDランプなど、灯火類も凝ったデザインとなっています。
その大胆な変貌ぶりに、筆者(工藤貴宏)は思わず二度見し、「本当に『3008』なの?」と声を上げてしまったのはここだけの話。「3008」は今回の世代交代によって、急におしゃれに目覚めてしまったかのような印象です。
インテリアも期待を裏切りません。高級というよりもモダンでアバンギャルド、まるでデザインホテルのロビーにいるかのような雰囲気で、落ち着くというよりもテンションが上がる空間となっています。
ダッシュボードからセンターコンソール、さらにはドアトリムにまで広がるファブリック仕立てのパネルが新鮮で、カジュアルな印象でありながら質感も高く、居心地のよさを感じさせてくれます。
ドアトリムはファブリックが張られるだけでなく、アームレスト部にソフトパッドが使われており、快適性や上質感にもきちんと配慮されていることが伝わってきます。“神は細部に宿る”といいますが、こうした見えにくい部分まで手を抜かない姿勢には感心させられます。
その上で、インパネのデザインがカッコいい! 飛行機のコックピットを思わせるレイアウトは従来モデルからのポイントですが、新型ではそこに未来感がプラスされています。
21インチと大型で湾曲したパノラミックディスプレイは高精細で見やすく、新型の自慢のポイントのひとつ。加えて、アンビエントライトによる演出も美しく、夜のドライブでは気分が高まります。
プジョー独自の運転席レイアウト“i-Cockpit”は、上部に配置されたメーターと小径ステアリングホイールを組み合わせることで視認性と操作性を両立するものですが、新型では新たに導入された大型ディスプレイとの組み合わせで“プジョー パノラミック i-Cockpit”へと進化。実際に運転してみると、とても見やすいなと感じました。
●初代のような強い存在感を再び手に入れるために
それにしても、新型「3008」はなぜこれほど大胆にデザインを変えてきたのでしょうか? そして、初代から2代目にかけて受け継いできたクロスオーバーSUVの王道スタイルを、なぜ手放したのでしょう? その答えは、存在感のあくなき追求にあるといえそうです。
初代が登場した2009年当時、ステーションワゴンとSUVのクロスオーバースタイルはとても個性的でした。続く2代目はSUVらしさを強めたものの、その結果、個性が少し薄れてしまった感は否めません。
だからこそ新しい3代目は、キャラクターをしっかり主張するスタイルへと舵を切ったのでしょう。「3008」ここにあり! といわんばかりに、初代のような強い存在感を再び手に入れようという強い意気込みが、新型のスタイリングからは強く感じ取れます。フォルムとデザインで勝負する……それが新型「3008」のねらいなのです。
プジョーらしい“やさしさ”に満ちた走り味
そんな新型「3008」のもうひとつのトピックがパワートレインです。
新型「3008」は、電動車用として新たに開発された“STLAミディアム”プラットフォームを採用していますが、そこに組み合わされるパワートレインはマイルドハイブリッドとBEV(電気自動車)の2種類。
まずはマイルドハイブリッド仕様が先行上陸し、追ってBEVを日本市場に投入予定だとアナウンスされています。
今回試乗したのはマイルドハイブリッド仕様。その印象は「とてもプジョーらしい」もので、“やさしさ”に満ちているといった表現がしっくりくる走り味です。
まず特筆すべきは、乗り心地のよさ。サスペンションがしなやかで路面からの衝撃をしっかり吸収してくれるので、快適に走れます。路面が荒れていても、ストレスフリーのやさしさを感じました。
新型「3008」に設定される48Vマイルドハイブリッドシステムは、1.2リッターの直列3気筒ガソリンターボエンジンに、6速DCT(デュアルクラッチ式トランスミッション)と電動モーターを組み込んだもの。
システム最高出力は145psと、数値的に見れば決してパワフルではありませんが、アクセルペダルを踏んだときのゆるやかな加速フィールは、いかにもプジョーらしい落ち着きと味わいがあり、同乗者にもやさしい走りを提供してくれます。
ちなみに同システム、トランスミッションにモーターが内蔵されていることから、条件次第では極低速域でエンジンを止め、モーターだけでの走行も可能です。マイルドハイブリッドながら、電動車のような走りを味わえるのも魅力です。
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クルマの世界は、トレンドが絶えず移り変わっていきます。そうした中で「3008」に求められる価値とは何でしょうか?
それはおそらく、ハッチバックである「308」以上の実用性を提供しながら、新鮮なプロポーションでドライバーのハートをつかむこと。新型「3008」は、そうした視点から見ると本質がより分かりやすいモデルだと思います。