「えっ、ホントに!?」音速の貴公子 故アイルトン・セナがデビューしたホンモノのF1マシンがオークションに出品 44年前の「トールマン」の価値は?
03/18 12:10
2026年4月にモナコで開催されるRMサザビーズ主催のオークションに、1984年式のレーシングマシン「トールマンTG183B」が出品される予定です。どんな歴史のあるモデルなのでしょうか。
1984年の母国ブラジルGPでF1デビューしたセナのマシン
2026年4月にモナコで開催されるRMサザビーズ主催のオークションに、1984年式のレーシングマシン「トールマンTG183B」が出品される予定です。
どんな歴史のあるモデルなのでしょうか。
3度のF1ワールドチャンピオンに輝き、161戦で41勝、表彰台39回、ポールポジション65回という輝かしい成績を残したアイルトン・セナ。その伝説的なキャリアの原点となったマシンが、1984年のトールマンTG183B(シャシ番号05)です。
このマシンは、セナがF1デビューを果たした記念すべき一台として、モータースポーツ史において特別な意味を持っています。
当時23歳だったセナは、1983年のイギリスF3選手権で開幕から9連勝という圧倒的な活躍を見せ、一躍注目の若手ドライバーとなりました。その結果、ブラバム、マクラーレン、ウィリアムズといったF1トップチームのテストに参加する機会を得ます。
しかし、いずれのチームもすぐにレギュラーシートを用意することができず、セナは最終的にトールマンと3年契約を結びF1に参戦することになります。
1984年シーズンの開幕時点では新型TG184の完成が間に合わず、チームは改良型のTG183Bで参戦しました。
セナがドライブしたシャシ05は、その冬に新たに製作された個体です。設計を担当したのは後にベネトンやフェラーリで7度のコンストラクターズタイトルを獲得する名エンジニア、ロリー・バーンとジョン・ジェントリーでした。

フロントウイングに装着されたラジエーターや、独特のツインリアウイングなど、特徴的なデザインを持つマシンとして知られています。
セナのF1デビューは、母国ブラジルのリオデジャネイロで開催された1984年ブラジルGPでした。予選ではチームメイトのジョニー・チェコットをわずかに上回り16番グリッドを獲得しますが、決勝ではハート製1.5リッター直列4気筒ターボエンジンのターボチャージャーが故障し、わずか8周でリタイアとなりました。
しかし続く南アフリカGPでは、その才能を早くも世界に示します。キャラミ・サーキットで13番手からスタートしたセナは、1周目にフロントウイングを破損しながらも追い上げを見せ、最終的に6位でフィニッシュ。これがセナにとって初の世界選手権ポイントとなりました。
さらにベルギーGPでは予選19番手から追い上げ、当初7位でフィニッシュ。後にティレルの失格により6位へ繰り上がり、再びポイントを獲得しています。
TG183B-05が実戦に投入された最後のレースは、イモラで行われたサンマリノGPでした。当時トールマンはピレリタイヤを使用していましたが、グッドイヤーやミシュランを履くライバルに対して性能面で劣勢でした。
セナは新型TG184の投入に合わせてミシュランへの変更を求め、チームとタイヤメーカーの関係は悪化。最終的に契約は解消されることになりました。
その後、新型TG184がフランスGPから投入されると、TG183B-05は役目を終えます。セナはこの年、雨のモナコGPで見せた驚異的な走りで2位に入るなど活躍し、ルーキーイヤーをランキング9位で終えました。
一方このマシンはチームによって保管された後、1992年にアメリカへ売却され、丁寧なレストアが施されます。のちにイギリスへ戻り、2017年に現在のオーナーのもとへ渡りました。
近年ではテレビ番組やイベントでも注目を集めています。2022年にはSky Sports F1のドキュメンタリー番組でマーティン・ブランドルがドライブし、そのバランスの良さを高く評価しました。
さらに2024年にはセナのF1デビュー40周年と没後30年を記念する企画で、アルピーヌF1のピエール・ガスリーがシルバーストンで走行。セナのヘルメットカラーを再現した特別仕様のヘルメットを着用してドライブし、「人生で忘れられない体験」と語っています。
このマシンはオリジナルのシフトレバーなど多くの当時の部品を残しています。正しい仕様のハート415Tエンジンを搭載し、ターボチャージャーやトランスミッションも整備済みで、走行可能な状態が維持されています。
F1史上最も偉大なドライバーのひとりとされるセナのキャリアは、このマシンから始まりました。歴史的なF1マシンとしての価値はもちろん、セナ伝説の出発点を象徴する存在として、TG183B-05は今後もモータースポーツ史の重要な一台として語り継がれていくことでしょう。
この1984年式「トールマンTG183B」、落札予想価格は280万ユーロから380万ユーロ(1ユーロ=182.7円換算で、日本円で約5億1150万円から6億9420万円)とされています。