コロナ禍の影響が薄らいだ2024年の「外食・フードサービス」業界、M&A件数が過去10年で最多に

2024年の飲食業界は円安に伴う原材料や人件費、エネルギー価格の上昇、さらにはコロナ禍に対する支援策の縮小・終了なども重なり厳しい経営環境が続いた。

東京商工リサーチによると、2024年1~10月の飲食業の倒産(負債1000万円以上)件数は前年同期比12.7%増の820件となり、2020年1~10月の730件を抜いて過去最多。コロナ禍関連の倒産は385件(同16.6%減)と減少しているものの、物価高倒産が49件と最多を更新したほか、人手不足に関連した倒産も43件に達し、2025年も厳しい経営環境が続くと見通している。

こうした厳しい環境下にあっても、コロナ禍の影響が薄まり、大手は業績を回復させたところが多く、外食・フードサービス業界を対象にしたM&Aは活況だった。

新ブランド・新業態の獲得などに動き

2024年12月22日までのM&A件数は31件で、コロナ禍前の2019年と並び、過去10年では最多となった。取引金額は2002億円で、2023年の2342億円には及ばなかったものの、金額は過去10年で2番目の多さだった。

M&Aの目的も変化しており、2023年5月の新型コロナ5類移行までは、外食企業による子会社・事業の譲渡(売り渡し)案件が目立ったが、2024年は外食企業が同業を取得する買収が増加した。内容を分析すると、消費者に支持される新ブランド・新業態の獲得、インバウンド(訪日観光客)需要の取り込み、海外進出や海外事業の拡大を目的にしたM&Aに集約される。

数年内に店舗数を約3倍に

新ブランドの獲得では、すかいらーくホールディングスによる、北九州市発祥のうどん・和食チェーン展開の資さんの子会社化(取引金額は240億円)がある。ロードサイドで集客力の高いブランドの獲得を目指していたすかいらーくは、自社の資金、立地開発力のノウハウなどを活用し、資さんの全国展開をサポート、数年内に約3倍の200店規模まで拡大させる計画だ。

ワタミの米国発サンドイッチチェーン「Subway」を国内で展開する日本サブウェイの子会社化(同非公表)も同様。2024年11月の185店から今後10年で1065店まで店舗を増やす計画で、将来は3000店を視野に入れる。ワタミは自社のノウハウでサブウェイの味を進化させると意気込み、インバウンド業態としても期待するほか、従来の居酒屋から”サブウェイのワタミ”へと企業イメージを変える力強いブランドを手にしたとアピールしている。

海外展開できる和食業態を取得

インバウンド需要の取り込みを狙ったのがサンマルクホールディングスだ。同社は牛カツ定食店「京都勝牛」を展開するゴリップを傘下に持つジーホールディングスの買収(同112億円)を10月に発表。さらに、「牛かつもと村」を傘下に置く、B級グルメ研究所ホールディングスの子会社化(同105億円)も11月に公表し、”牛カツ”業態に力を入れる。

京都勝牛は韓国、タイ、香港、カナダ、台湾、インドネシア、シンガポール、フィリピンなどに20店近くを展開しており、牛かつもと村も台湾に出店している。インバウンド需要を取り込み、海外展開もできる和食業態を望んでいたサンマルクの意向を満たした案件となった。

海外企業の買収も

海外企業を買収する案件も複数発生した(31件中6件)。クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、北米での事業展開加速を目的に、米Wildflower Bread Companyが「ワイルドフラワー」ブランドで展開するベーカリーレストラン事業を取得(同41億円)。

コメダホールディングスは、カフェ・タイ料理レストランを経営するシンガポールPOON RESOURCESを子会社化(同18億円)し、海外事業を強化する。すかいらーくはイスラム教徒向けすき焼き・しゃぶしゃぶ店(豚肉・アルコール提供はなし)を運営するマレーシアのCreateries Consultancyなど同グループ3社の買収(同非公表)も発表している。

2024年の外食・フードサービスのM&A 取引総額上位10件(12月22日時点)

文:M&A Online記者 松本亮一

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