存在感高まる中国国債、「格付け」は日本に迫る水準に

国際債券市場で、中国国債の存在感が急速に高まっている。ユーロ建て債では25倍の応募倍率、直近のドル建て債でも発行額40億ドルに対して約1180億ドルの注文が集まり、約30倍の需要となった。投資家の評価は、確実に変化している。

日本国債は、高市政権による積極財政が本格化するなかで、長期金利の上昇、応札倍率の低迷、債務拡大が同時に進行。日本国債の“絶対的安全資産”としてのブランド力が揺らぎつつある。

海外投資家を引きつける中国国債の強さ

中国政府は「海外市場での調達」を明確な政策目標に掲げている。2025年11月に実施されたユーロ建ての4年債と7年債(総額40億ユーロ=約7200億円)では、約1000億ユーロ(約18兆円)の応募が殺到し、倍率は25倍を記録した。

買い手は欧州が過半を占め、アジア、中東、米国の投資家も積極的に参加した。応募件数は1000件を超え、新興国のソブリン債(政府発行債券)としては異例の需要である。

背景には、人民元市場の国際化やオンショア債(国内市場で発行される債券)市場の拡大(約25兆ドル=約3890兆円規模)、中国政府の金融戦略がある。

海外投資家の中国国内債券市場へのアクセス制度は改善され、債券指数への組み入れも進み、中国債券は「新興国債」ではなく「主要市場の一角」として認識され始めた。

金利面でも、10年中国国債の利回りは日本国債と同じ1.8%前後と、ほぼ並ぶ。しかし、この利回りは、必ずしも信用評価が同水準に到達したことを意味しないことには留意しておく必要がある。

国内大手銀行や政策銀行による強制需要、資本移動管理といった、中国の制度要因が金利を押し下げている面が大きいからだ。

日本国債に重くのしかかる“積極財政”の副作用

一方の高市政権は誕生以来、「日本経済の再起動」を掲げ、以下の政策を矢継ぎ早に打ち出してきた。大規模な補正予算の連続編成や減税措置の拡大、エネルギー・防衛・子育てへの巨額歳出、中長期の財政支出計画の積極化、国債発行枠の拡大といった政策は、短期的には景気下支えに寄与する。

その一方で、国債市場では「恒常的な増発リスク」として受け止められている。20年〜40年といった超長期日本国債の利回りは、政策発表の度に上昇基調を強め、10年債利回りも17年ぶりの高水準に達した。応札倍率は2倍台前半に落ち込んだケースもあり、敬遠ムードが広がっている。

「財政拡張が続く限り、長期金利の上昇は止まらない」や「日銀の国債買いオペ縮小が重なれば、需給はさらに悪化する」という指摘も多い。高市政権の積極財政は政治的には評価を得やすいが、債券市場の視点では「リスクプレミアムを押し上げる要因」として織り込まれつつある。

国債格付けでの差は縮小

格付け機関の判断を比較すると、長期格付けは日本と中国でほぼ同じだ。S&Pは「A+」、ムーディーズは「A1」、フィッチ・レーティングスは「A」と、両国とも形式的には同格だ。

ただ、「見通し(Outlook)」では差が残る。日本は3社とも「安定」と評価されているが、中国はムーディーズがネガティブ、フィッチは2025年に格下げを実施している。地方政府の債務や不動産市場の悪化、資本規制リスクが背景にある。

とはいえ、中国国債の国際的な存在感が増していることは、格付け機関にとっても無視できない。海外発行の成功や需給額の厚み、利回りの安定は、将来的に格付け見直しの材料になり得る。

一方、日本は高市政権下の財政拡張が長期的な債務負担を押し上げ、財政規律への疑念が強まる可能性がある。現在は日本がわずかに優位だが、この差が今後も保たれる保証はない。

「量」だけでなく、「質」でも追い抜かれるのか?

総合的にみれば、中国国債は日本国債を上回る信用力を獲得したわけではないが、国際市場での存在感は確実に増した。

日本国債は依然として流動性・透明性で優位にあるものの、高市政権の積極財政が中長期のリスクとして意識されるようになっており、「絶対安全資産」という、かつてのポジションにかげりが見え始めている。

日中の国債は、これまでのような「先進国 対 新興国」という構図ではなく、「相対的評価で市場が選ぶ」局面に入りつつある。

今後の焦点は、中国が資本規制をどこまで緩和して市場の透明性を高められるか、一方の日本は財政規律と市場の信認を維持できるかに尽きる。高市政権の積極財政と日本国債への信認のバランスは、日本国債の将来を左右する重要な試金石となる。

日本国債が中国国債に格付けなどの信用度で追い抜かれる日は来るのか。万一、そうなれば経済の「量」だけでなく「質」でも、日本は中国に敗北することになる。高市政権の財政・国債管理政策が注目される。

文:糸永正行編集委員

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