広がる日米格差、国内核融合ビジネスの資金調達は? 京大発ベンチャーに聞く

「夢のエネルギー」と呼ばれてきた核融合が、いま研究から巨大産業へと姿を変えつつある。欧米では民間資金の流入が急速に進み、核融合スタートアップが数千億円規模の資金を調達するケースも現れた。技術競争と同時に、「どのようなビジネスモデルで産業化するのか」が新たな問題となっている。核融合事業の資金調達や成長戦略について、京都大学発ベンチャーの京都フュージョニアリングを率いる小西哲之会長CEOが、日本記者クラブの会見でM&A Onlineの質問に答えた。

日米核融合ベンチャーで圧倒的な資金格差が…

核融合ビジネスは、巨額の資金を必要とする。大型発電設備の建設費は原子力発電所に匹敵する規模とされる。一方、燃料費は極めて低く、長期的には競争力のある電源になる可能性があると見込まれている。大型投資の見返りは十分にある。

ただし、実用化までには数十年単位の開発期間が必要で、一般的なスタートアップの成長モデルとは大きく異なる。

米国では民間主導の核融合企業が台頭しており、マサチューセッツ工科大学(MIT)発のCommonwealth Fusion Systems(CFS)は2025年8月時点で累計約30億ドルを調達した。TAE Technologies(旧Tri Alpha Energy)は13億ドル超、Helion Energyも2025年1月時点で累計10億ドル超の資金を集めている。

これに対し、京都フュージョニアリングの2025年9月時点の累計エクイティ調達額は162億6000万円(約1.1億ドル)で、資金規模には大きな差がある。

民間からの資金調達よりも官民連携を重視

小西会長は「核融合ビジネスは、長いレンジで見てもらうしかない。期待しているのは官からの出資だ。核融合は国の関与する公的セクターに近い事業になる。官民協力の枠組みの中で出口を考えていきたい」と話し、短期的なEXITよりも官民協力を軸とした事業化を重視する考えを示した。

核融合は電力インフラに近い性格を持つ。短期的なEXITを前提とする一般的なスタートアップの資本市場モデルとは、必ずしも相性が良いとは言えない。そのため、政府の関与を含めた官民連携型の資金調達が現実的な選択肢になるとの認識だ。

核融合ビジネスのカギは国際サプライチェーン

もう一つの重要な課題は、日本が核融合産業で主導権を握れるかどうかである。日本は超電導コイルやブランケット(中性子を受けて燃料を生み出す装置)などの分野で高い技術力を持つとされるが、核融合炉は単一企業で開発できる技術ではない。

プラズマ制御やコイル、材料技術、冷却システム、燃料循環など、多数の要素技術が組み合わさって初めて成立する。小西会長は、産業構造は航空機や半導体に近い国際サプライチェーン型になると見ている。

日本が技術主導権を取るために海外企業の技術を買収して取り込むのか、それとも国内企業を育成するのか。

小西会長は「我々の技術は、さまざまな企業をつなぎ合わせて生まれている。国の研究機関、民間企業、外国企業の区別をしているわけではない」と述べ、特定の企業や国に限定しない協力体制を基本とする考えを示した。

実際、日本は一部の要素技術では強みを持つものの「遠隔操作技術(リモートハンドリング)など弱い領域もある」(同)。そうした分野では英国など海外の技術協力を活用していくという。

国際共同開発で主導権を取る

核融合開発は現在、欧州、米国、日本、中国など複数の地域が競い合う構図にある。欧州では国際熱核融合実験炉(ITER)計画が進み、米国では民間企業が新しい技術開発を進めている。中国も国家主導で研究開発を進めており、競争は激しさを増している。

小西会長は「核融合技術は複数の国や企業が共同で研究開発を進める国際プロジェクトが中心となっており、国際協調によるサプライチェーンを築く必要がある。国際共同開発の中で主導的な立場を取ることが重要だ」と強調する。

日本としては国内技術を基盤としつつ、海外の技術や企業と連携しながら産業の中心に立つことが求められるという。

UNITY-2

2025年11月、京都フュージョニアリングとカナダ原子力研究所のジョイントベンチャー「Fusion Fuel Cycles Inc.」は、世界初の統合型トリチウム燃料サイクルシステム試験施設「UNITY-2」の建設を開始した(京都フュージョニアリングのニュースリリースより)

未来の巨大産業を育てる資金は?

核融合は長年「未来のエネルギー」と呼ばれてきたが、近年は民間投資の拡大によって実用化競争が一気に加速している。技術開発だけでなく、どこが商用化後の主導権を握るのかというビジネス競争も始まった。

核融合を単なる研究開発プロジェクトではなく、官民連携と国際協業を前提とする巨大産業として捉える時期に入りつつある。技術、資金、産業政策が複雑に絡み合う中で、日本がどの位置を占めるのか。核融合は次世代産業の主導権を巡る競争の舞台にもなりそうだ。

日本が核融合で主導権を得るには、資金調達の「壁」を乗り越える必要がある。20年後、30年後に向けた次世代技術をM&AやIPOで賄うことができるのか? 長期間にわたるEXITを想定した資金調達のあり方が求められる。

京都フュージョニアリングは、核融合炉の実用化に必要な機器・システムの開発を手がける日本のスタートアップ企業。京大の核融合研究を事業化するため2019年に設立され、核融合発電のサプライチェーンを担う装置・エンジニアリング企業として事業を展開している。

文・写真:糸永正行編集委員

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