南極にある「血の滝」の謎が解明される

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Credit: National Science Foundation/Peter Rejcek via Wikimedia Commons

100年以上解けなかった謎。

1911年、オーストラリアの地質学者トーマス・グリフィス・テイラーは、南極の東南極の先端に血のようなものが流れているのを発見しました。これは「血の滝」と呼ばれていますが、本物の血液が流れているわけではありません。研究で、この赤色は酸化鉄によるものだと確認されています。

でも、どのようにしてその色になったのか、また赤色のもととなった鉄自体がどこから来たのかは、はっきりしていませんでした。

しかし、今回出てきた新たな仮説が100年以上続いた謎に終止符を打つ可能性が出てきました。

なんで赤いの?

学術誌『Antarctic Science』に掲載された論文では、血の滝の赤は周辺の氷河の下で生じている圧力変動によるものかもしれないと述べられています。

氷河の重みが下にある塩水に強い圧力をかけ、その結果、海水と鉱物が周期的に亀裂から噴き出し、その鉄が空気に触れて酸化し、さびた赤色になるということみたいです。

研究チームは、この発見が血の滝のある地域で「氷河の動態と氷河下の水の流れ、そして生態系が密接に結びついている」ことを浮き彫りにしていると論文で述べています。

氷の砂漠

血の滝は南極のマクマード・ドライバレーと呼ばれる地域にあります。ここは南極大陸で最大の不凍地域で、雪に覆われていない地面が点在し、氷に覆われた湖がいくつもあります。

これらの湖はそれぞれ化学組成が異なり、南極の地質進化を研究する科学者たちにとって重要な研究対象となっています。

血の滝はテイラー氷河の端から染み出し、永久に氷で覆われた塩湖「ボニー湖」へと流れ込んでいます。

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Credit: Robert Simmon/NASA Earth Observatory

ゆっくりと着実に進む研究

南極の環境を調査するのは簡単なことではありません。なので、血の滝の研究の進み具合もゆっくりとしたもので、数十年かけて少しずつその謎が明らかになってきています。赤色が鉄塩、すなわち水酸化第二鉄で、それが氷を赤に染めていることが初めて確認されたのは、1960年代半のことでした。

そして2003年には、オハイオ州立大学の科学チームが10年にわたり赤い流出物のサンプルを分析。この塩はかつて存在した古代の湖底から来たもので、現在は凍結乾燥した状態でテイラー氷河の下に閉じ込められていると結論づけています。

さらにその6年後、別の研究チームが血の滝の水サンプルから少なくとも17種類の微生物を発見し、血の滝でいろいろな種類の生物の活動が起きていることがわかったのです。

最後のピースが見つかる

今回の研究は、2018年ごろから始まった観測によるものです。

ルイジアナ州立大学バトンルージュ校の地質学者Peter T. Doran氏率いる研究チームは、この地域の氷河下の水の流れが、これまで考えられていたよりももっと複雑で広範囲に及んでいることを突き止めました。

研究チームがGPSデータを使って血の滝周辺の気温、深さ、氷の変化を時系列で再構成したところ、テイラー氷河の動きに影響を与える気温の変化、氷の動き、氷の下にある塩水の状態が、同じタイミングで連動して変わっていたことがわかったのです。

氷の重さによって下の塩水が圧縮され、あるタイミングでその水が吹き出します。そして、その吹き出しが氷河の動きにも影響を与え、ほんのわずかながらその動きを乱していたことも判明しました。

今回の研究は血の滝の謎のひとつを解明したわけですが、この地域が今後、さらに進む気候変動の影響によってどのように変化するのかについては、いまだはっきりしたことはわかっていません。

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