人間の口の中に答えがあった。ピーナッツアレルギーに勝つ方法
03/10 12:00
GIZMODO

こんな身近に最強の戦士がいた!
人間の口の中と腸内にいる微小な微生物が、ピーナッツアレルギーを引き起こす危険なタンパク質をうまく分解できることが判明しました。
どんな微生物?
つまり、私たちの唾液や胃液の中には、危険なアレルゲンを分解できる微生物が、すでに存在しているかもしれないということです。研究対象となった微生物の中でも、「Rothia aeria ASV 14171」というロチア属の細菌が、アレルギー反応を抑える効果が最もあるそうで、将来的には医療治療になっていく可能性があるとのことです。今回の研究は、学術誌『Cell Host & Microbe』に掲載されています。
今回の研究を主導したマクマスター大学の消化器健康研究所のLiam Rondeau研究員は、「ピーナッツアレルギーは呼吸困難などの深刻な反応を引き起こすことがあり、場合によっては命に関わることもあります。反対にピーナッツアレルギーを持っていても、少量であれば食べても反応が出ない人もいます。その理由が気になっていたんです」と語っています。
攻略が難しいピーナッツ
ピーナッツアレルギーは、一般人口の約2%が持っているといわれるよくある食物アレルギーです。また、意図せずアレルゲンにさらされたり、重篤な発作を起こしたりしやすい食物アレルギーとしても知られていて、ピーナッツアレルギーを持つ人のうち、年間7〜14%に何らかの反応が起こっているといわれています。
年間発作のうち、1/3から1/2はアナフィラキシーを伴う発作なんだそうです。アナフィラキシーとは、免疫系の過剰反応のことで、発疹、吐き気、急激な血圧低下、気道が息ができなくなるほど狭くなるといった症状が出ます。場合によっては死に至ることもあります。
さらにやっかいなことに、ピーナッツアレルギーは他の食物アレルギーに比べて、大人になっても続く場合が多く、ピーナッツアレルギーの診断を受けた子どもの最大80%が、成人後もリスクを抱え続けることになります。
ピーナッツに含まれるAra h 1とAra h 2という2種類のタンパク質が、こうした過剰で危険な免疫系の暴走を引き起こす原因であることは以前から確認されています。
今回の研究チームは、このタンパク質を最も効果的に中和できる消化細菌は何かを調べるため、ピーナッツアレルギーを持つ特殊な実験用マウスと、ヒトの口腔と小腸から採取した個々の細菌を使って検証を行ないました。
ピーナッツアレルギーと戦える細菌
ピーナッツアレルギーが発症するスピードの速さを踏まえ、研究チームはまず、試験管内での試験で、人間の唾液中に存在する細菌に注目しました。まず食物アレルギーがない健康な13人のボランティアから採取した細菌サンプルを調べました。小腸に多く見られる細菌についても、同様に健康な5人のボランティアの口腔から採取し、検証が行なわれました。
Ara h 1およびAra h 2タンパク質を分解できる細菌は、ブドウ球菌、連鎖球菌、ベイロネラを含む複数の属で検出・単離されましたが、ピーナッツアレルゲンタンパク質に対して最も安定した防御効果を示したのは、ロチア属の細菌でした。
口腔マイクロバイオームで優勢な属であるロチアは、Ara h 1とAra h 2の両方に対して有効であることが判明しました。特にRothia aeriaという種が際立った存在で、試験管内の試験ではアレルゲンのほぼ100%を消滅させることができたのです。
この実験結果の正当性をさらに裏付けるため、研究チームは過去に行なわれた別の研究にも注目しました。
その研究は、ピーナッツアレルギーの疑いがある120人の子どもを対象に、口腔マイクロバイオーム、腸内マイクロバイオーム、およびその他の体内部位における様々な細菌の分布を記録したものでした。この研究グループには、アレルギーなしと最終的に判定された23人のコントロール患者のほか、ピーナッツを443mg以上摂取しても反応が出なかった「耐性の高い」アレルギー患者74人、そして433mg未満で反応が出た「耐性の低い」患者23人が含まれていました。
こうした細菌の小規模な分布データをもとに、研究チームは、Rothia aeriaがアレルギー反応のない人や、ピーナッツ暴露に対して高い耐性を持つ人の唾液の中で「有意に多く存在している」ことを確認したのです。
この研究の著者でマクマスター大学医学部のAlberto Caminero Fernandez准教授は、プレスリリースの中で以下のように述べています。
「口腔と腸内の微生物は、消化において重要な役割を担っています。
今回の発見は、口腔および腸内マイクロバイオームと食物アレルギーを結びつける、新たな経路を指し示しています。そして予測と治療に関する今後の研究を導く助けになるかもしれません」
マクマスター大学によると、今後の治療法として培養した細菌を使った新しいプロバイオティクス療法が候補に挙がっているそうです。これは少量のアレルゲンを少しずつ摂取させて体を慣らしていく従来の経口免疫療法と組み合わせて使うことが想定されています。