宇宙人の信号はすでに届いていた? SETI研究者が気づいた“見逃し”の可能性

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Image: StudioASD / Shutterstock.com

地球外知的生命体との交流を試みた科学者の、苦闘を描いた名作映画『コンタクト』。主人公のエリー・アロウェイ博士(ジョディ・フォスター)が、幼い頃からヘッドホン越しに宇宙の声を探し続け、ついに規則正しいパルス信号をキャッチするシーンは印象的でした。

『コンタクト』は、天文学者カール・セーガンが書いた小説が原作です。作者自身が天文学者だったこともあり、作品には現実の科学に基づいたアイデアが数多く盛り込まれています。つまり、あの映画の物語は完全な空想というわけではなく、現実の科学とも深くつながっているんです。

例えば、実際の科学者たちも地球外知的生命体を探し続けています。その研究はSETI(Search for Extraterrestrial Intelligence)と呼ばれており、巨大な電波望遠鏡を使って宇宙をスキャンし、人工的な電波信号を探しています

SETIの研究者たちが特に注目してきたのは、非常に細く鋭い周波数の電波です。こうした信号は自然界ではほとんど発生しないため、もし宇宙から届けば、知的文明が意図的に送ったメッセージである可能性が高いと考えられてきました。映画でも規則正しい高音をキャッチして「これは……!」ってなっていましたよね。

ところが最近、この探し方そのものに思わぬ盲点があるかもしれないことが分かってきました。

最新の研究によると、宇宙のどこかにいる知的生命体が強い電波信号を送っていたとしても、地球に届く頃には別の形に変わってしまう可能性があるというのです。その結果、私たちがそれを「ただの宇宙ノイズ」として見逃していたかもしれません。

犯人は「宇宙天気」

この研究を発表したのは、SETI研究所の研究チームです。論文は、アメリカ天文学会の学術誌『The Astrophysical Journal』に掲載されました。

研究者たちが注目したのは、宇宙で起きる「宇宙天気(space weather)」と呼ばれる現象です。

宇宙天気とは、恒星から大量のプラズマが吹き出す「恒星風」や、太陽フレアのような巨大な爆発現象などの、恒星の周囲で起きる激しい活動のことを指します。

こうした現象が起きると、恒星の周囲の宇宙空間にはエネルギーを帯びた粒子やプラズマが大量に広がります。そして、その中を電波が通過すると、信号の形が変わってしまうことがあるのです。

研究を率いた天文学者ヴィシャール・ガジャー氏によると、これまでのSETIの探索は「非常に狭い周波数帯の信号」に最適化されていました。

しかし宇宙天気の影響を受けると、もともとは鋭く集中していた電波信号が、複数の周波数に広がってしまうことがあります。研究者たちはこれを、「スペクトル拡散(spectral broadening)」と呼んでいます。

ガジャー氏は声明の中で

信号がその恒星の環境によって広がってしまうと、実際には存在していても、私たちの検出基準より弱く見えてしまう可能性があります。

と説明しています。

つまり、宇宙人が送ったかもしれない信号が、観測装置のフィルターに引っかからず素通りしていた可能性があるのです。

人類の探査機がヒントをくれた

この仮説を検証するため、研究チームは過去の宇宙探査機の通信データを調べました。

対象となったのは、1960〜70年代に打ち上げられた探査機たちです。マリナー4号、パイオニア6号、ヘリオス1号・2号、そして火星探査機バイキングなど、太陽系の奥深くまで飛んだ歴史的なミッションの電波通信が分析されました。

その結果、太陽に近い場所から送信された電波ほど、周波数が広がって「にじむ」現象が確認されたのです。

特にパイオニア6号のデータでは、太陽嵐の発生時にこの効果がより顕著になることも分かりました。

また、太陽の近くを周回したヘリオス探査機の通信でも、太陽に近づくほど電波信号の拡散が強くなる傾向が確認されました。

一方で、太陽から約200万km以上離れると、この影響は急激に弱まり、さらに約695万km付近からはゆるやかに減少していくことも分かりました。

「ボロボロになった信号」を探す時代へ

今回の研究は、SETIの探査方法を見直す重要なヒントになります。

これまでのSETIは、送信された瞬間のきれいな信号を想定していました。しかし実際には、その信号は宇宙を旅する間に変形し、ぼやけた形で地球に届く可能性があります。

そこで研究チームは、恒星の環境によって信号がどのように歪むのかをモデル化し、より現実に近い探索方法を開発しようとしています。

特に注目されているのが、太陽より小さく活動が激しい赤色矮星(M型星)です。銀河系の恒星の多くを占めるこれらの星の周囲では、宇宙天気の影響がさらに強くなる可能性があります。

研究の共著者であるグレイシー・C・ブラウン氏はこう述べています。

恒星活動が狭帯域信号をどのように変形させるのかを定量化できれば、実際に地球に届く信号に合わせた探索が可能になります。宇宙からのメッセージは、本当にまだ届いていないのでしょうか。もしかすると、私たちが気づかない形で、すでに届いているのかもしれません。

映画では長い年月、ひたすら宇宙の音に耳をすませば出会えましたが、現実では「きれいな信号」ではなく「崩れた信号」の中からメッセージを探す必要があるようです。

映画のように簡単にはいかない、というのはどのジャンルにも当てはまりますが、それにしてもSETIは、ひときわハードモードに感じますね。

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