暗闇での太陽光発電に成功。 カギは「木材」を使ったトリック
04/16 21:30
GIZMODO

実用化されたら木が足りるのかちょっと心配。
太陽エネルギーの活用は、地球上で最もクリーンな発電方法のひとつ。ただ、明らかな弱点があります。日が暮れると太陽光パネルはオブジェと化します。最もエネルギーが生産される時間帯と、最もエネルギーが必要な時間帯のあいだにギャップが生じるんですよね。
このギャップを埋めるために、科学者のチームが、昼間にため込んだ太陽のエネルギーを夜になっても活用する方法を発見した可能性があるそうですよ。
日没後も続く太陽の恵み
中国の研究チームは、木材の内部構造を再設計して、吸収した太陽光を熱として蓄えられる多孔質のスポンジに変えました。この人工素材を使えば、太陽が沈んだ後も太陽エネルギーから発電できるのだとか。
学術誌Advanced Energy Materialsに掲載されたこの研究成果は、太陽光発電の最大の弱点を克服する一助になるかもしれません。
いまのところ、暗闇で太陽光発電を行なう方法はありませんが、太陽の熱によるエネルギーを日没後にも活用できるよう、これまで巧妙な工夫をしてきました。
最も一般的な解決策は、蓄電バッテリー。日中に発電したエネルギーを大規模なバッテリーに蓄え、夜間に放出する仕組みです。
研究チームはまた、異なる素材を積み重ねて特定の波長の光を吸収させ、エネルギーの無駄を減らすための実験も進めています。素材を重ねる手法は、発電時間の延長に役立つ一方で、耐久性やコスト、拡張性の面で課題があります。
今回の研究では、異なる素材の層を重ね合わせる代わりに、拡張性があって環境に配慮した解決策に着目しました。それが、軽量で柔らかく、加工しやすい天然の多孔質構造を持つ木材であるバルサ材です。バルサ材は熱を遮断する能力にも優れているので、エネルギー貯蔵システムとして理想的とのこと。
生まれ変わるバルサ材
ただし、そのままの状態だと、生の木は太陽光を反射し、水分を吸収してしまいます。そのため、研究チームはまず、木を硬くして直立姿勢を維持する役割を持つ複雑な分子であるリグニンを取り除く必要がありました。リグニンを除去すれば、木材の多孔性が高くなり、光をより効率的に吸収できるようになります。
その後、木材の内表面を化学的に改質させ、その導管の壁面を極薄の黒リンのシートでコーティングしました。リンは、幅広い波長の光と相互作用し、高い伝導性があります。ところが、酸素にさらされると劣化するといいます。
リンのこの弱点を克服するために、研究チームは各ナノシートをタンニン酸と鉄イオンからなる保護層で包みました。この分子シールドは、酸化を防ぐと同時に、光の吸収効率も向上させるそうです。
それだけではありません。次に、研究チームは木材に銀ナノ粒子を加え、太陽光との相互作用を強化。その後、水素と炭素が鎖状につながった分子である炭化水素鎖を木材の表面に配置しました。
水素と炭素が結合すると、大量にエネルギーを蓄積し、あとで熱として放出できます。また、この炭化水素鎖によって、木材は接触角153度という極めて高い撥水性(180度に近いほど撥水性が高く、0度に近いほど親水性が高い)を持つことができました。
そして最後に、木材内部の導管をステアリン酸(動植物の脂肪に豊富に含まれる飽和脂肪酸)で満たしました。ステアリン酸もまた、加熱時に太陽エネルギーを蓄え、冷えるとそれを放出するのに役立ちます。
太陽光の90%以上を熱に変換
研究チームは、改質後のバルサ材の性能をテストしました。太陽光が木材に当たると、ステアリン酸が加熱されます。光がなくなると、蓄えられた熱が徐々に放出され、暗闇のなかで電気を発生させます。
生まれ変わったバルサ材は、太陽光の91.2%を熱に変換し、天然の木材と比較して熱伝導効率が3.9倍にアップ。熱電発電機(温度差によって発電する装置)を使用すると、加工されたバルサ材は1サイクルあたり最大0.65ボルトの電力を生成したそうです。数値はかなり小さいですが、暗闇でも木材ベースで太陽光発電が機能するという文脈で大きな意味を持ちます。
また、この木材は高い耐久性があることを実証しました。加熱と冷却のサイクルを100回繰り返しても、性能はほぼ変わらなかったといいます。
研究チームは、論文のなかで、「私たちの研究は、先進的な太陽熱エネルギーを回収するための、拡張性があって環境に優しい木材ベースの基盤を提示するものです」と述べています。
今回の結果はあくまで予備的な段階。この新しい設計が、太陽から回収したエネルギーを、日が暮れてから電気に変換する用途で広く利用できることを証明する必要があります。もし実用化に成功すれば、効率的な万能クリーンエネルギーになるかもしれませんね。