海王星の衛星ネレイデ、破壊星トリトンが太古に起こした大惨事の生存者だった
05/31 21:30
ザ・宇宙ロマン。
太陽から最も遠い惑星、海王星。その軌道には、実に奇妙な衛星群が存在します。その理由は、数十億年前にさかのぼります。
当時、海王星最大の衛星トリトンが、惑星の軌道に無理やり割り込み、大混乱が起きました。その際、トリトンとの激しい突入によって海王星の元の衛星群は激しく破壊され、すべてが宇宙の塵と消えたのです。たった1つの衛星を除いて。
今回、ある研究チームがウェッブ宇宙望遠鏡のデータを活用し、衛星ネレイドが「海王星の衛星の歴史を書き換えた古代の衛星衝突の唯一の生存者」だと提唱しました。
科学誌『Science Advances』に掲載された最新の研究論文において、研究者チームは太陽系の混沌とした歴史と、それが数十億年かけてどのように変化してきたか、新たな知見を提供しています。
華麗に登場
海王星の衛星トリトンは、海王星本体のわずか17日後に発見されました。その大きさは地球の月とほぼ同じ。海王星の他の衛星よりはるかに大きく、海王星の自転方向とは逆方向に公転するという、太陽系で唯一の特異な動きをする大型衛星です。
こうした特異な性質から、トリトンは海王星形成時の残骸からできたものではない、と言われています。それよりも、約40億年前に海王星の重力に引き寄せられて捕獲された、カイパーベルト天体である可能性が高い、と。
そのトリトンが海王星の軌道に進入した際、惑星の衛星系では大きな混乱が引き起こされたと考えられています。
そんな海王星を周回するもう1つの奇妙な衛星が、ネレイドです。海王星の衛星の中で3番目に大きく、太陽系で最大の軌道離心率(どれだけ真円からつぶれているか)を持つのが特徴。海王星の最も外側の衛星の1つで、公転周期は360日にも及びます。この特異な軌道から、ネレイドもまた海王星の重力に捕獲された可能性が示唆されています。
しかし今回の新たな研究によると、トリトンとネレイドは共通の起源を持つのではなく、長年の敵対関係にある可能性があることがわかりました。
生き残った衛星
カリフォルニア工科大学の筆頭著者マシュー・ベリャコフ氏率いる研究チームは、ウェッブ宇宙望遠鏡の赤外線観測機能を用いて、ネレイドを合計10分40秒にわたって観測しました。その結果、ネレイドの表面は水に富み、多くのカイパーベルト天体よりも明るいことが判明。むしろ、ネレイドの全体的な特徴は、天王星の衛星群に類似していたのです。
次に、研究チームはネレイドが海王星の初期の衛星群の一員であった可能性を検証するため、コンピュータシミュレーションを実施。トリトンが海王星の衛星系に衝突したシミュレーションでは、約20%の確率で1つ以上の衛星が不規則な軌道上で生き残ることが示されました。
この研究によると、太陽系誕生から2億年以内に、トリトンが海王星の軌道に強引に突入したことで、海王星の初期の衛星群が破壊された可能性が高いことがわかります。一方、ネレイドは破壊を免れ、外側へ弾き飛ばされ、離心率の高い軌道に乗ったと考えられます。
かつて、太古の宇宙にトリトンが到来。衛星同士の衝突が起きて若き海王星が混乱に陥りました。多くの月が母星から遠くに追いやられるなか、ネレイデが唯一の生き残りとして今も母星の周回軌道上にいるのです。ああなんて、壮大な物語なのでしょう。