「むしろ一人だったからこそ頑張れた」70歳の演歌歌手・原田悠里独身を後悔したことはないと断言
05/30 08:00
2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が「生涯独身」に? 「結婚しない」生き方が普通の時代がやってくるといいます。とはいえ、人は一人で生まれて一人で死んでいくもの。独身で楽しく健康に暮らしてきた原田悠里さんに、元気の秘訣などを聞きました!
一人のほうが進みやすかった
小学校の音楽教師から演歌歌手の道に進んだ原田悠里さん。70歳とは思えないエネルギッシュな歌声とステージでファンを魅了し、熱烈なファンからは「結婚しないで」と言われてきた。
「だから結婚しなかったわけではないのですが、一生懸命歌っているうちに気づいたら独身でここまで来ていたという感じです。若いころはずっと独身でいるなんて思いもしませんでした。でも、もう少し頑張ろう、結果を出そうと努力を続けていくうちに、やっぱり一人のほうが進みやすかったと思います」
人生の支えとなってきたのもやはり歌手という使命感だ。
「周りはペットを飼ってらっしゃる方が多く微笑ましいのですが自分を飼うのに精いっぱい(笑)。ペットに愛情を注ぐ余裕はなかったですね。
映画鑑賞やミュージカル鑑賞が趣味だと思っていましたが、それも皆さんにいい歌をお届けしたい、そのための肉体的な栄養であり、精神的な栄養であるためにと……すべての行動が歌につながっていて、歌うお仕事が人生の支えになっていたようです」
27年間ジムに通っているのも、ステージで元気な姿を披露するためだ。
「もともとは運動が苦手だったので、歌手をしていなかったらジムに通うことなんてなかったと思います。今は筋トレもしていますが、健康な身体を少しでもキープできるよう続けています。
お客様に時間をいただいて歌を聴いてもらうわけですから、当然ですよね。私が歌いながら脚を上げたり、時にはジャンプをすることで、お客様に元気な姿をお見せして、『私も頑張ろう』と思っていただければ本望です」
もちろん美容面にも力を入れている。
「何もしていませんと言いたいところですけど、やはり人前に立つ仕事なので少しでもきれいでいたい。効果が高いといわれるものは試したくなります。とはいえ、全身の健康状態が肌に現れるので、肌だけきれいにするなんていうことは難しいですよね。
血液の循環をよくすることが健康と美容にもつながると信じていて、きれいな方のお話は興味津々です」
演歌歌手の仲間たちと仲が良く、切磋琢磨してきたことは生きる原動力となっている。
「二葉百合子さんに指導を受けた『二葉組』として、坂本冬美さん、藤あや子さん、石原詢子さん、島津亜矢さんとはなんでも話せる間柄です。ライバルでもあり、癒される仲間は本当に大切な存在です」
倒れたときにまで周りの皆さんに負担をかけたくない
一人で暮らすことに不安がないわけではないが、倒れたときのための見守りサービスは必要ないという原田さん。
「もしものときのために私よりも若い50代の友人から、見守りサービスの設置をすすめられましたが、倒れたらそのときが寿命だとも考えています。なんとしても助けてもらいたいという気持ちがないんです。両親を見送ったことで、自分が背負っている義務は果たしました。
こうして仕事をさせていただけることで十分幸せなので、倒れたときにまで周りの皆さんに負担をかけたくないですね。父は畑で倒れてそのまま旅立ち、母は施設に入って99歳まで長生きしました。私は父に似ているので、パタッと逝けるのではないかと思っています」
芸の道に生きてきて、これからも歩みを止めずに究めていきたいと語る。
「私の周りには何回も結婚したり、男性がいないと生きられないという羨ましい女性もいらっしゃいますが、私はむしろ一人だったからこそ頑張れた、一人だったからこそ、たくさんの人に助けていただけたと感謝しています。
一人だったからやれなかったことは、ほとんどありません。独身だったことを後悔したことはないですし、ここまで歌手としてやってこられてよかった、ありがたいという気持ちしかないです。これからもこんなふうに生きていけたらと思っています」
取材・文/紀和 静
はらだ・ゆり 1954年生まれ、熊本県天草市出身。鹿児島大学教育学部音楽科卒業後、小学校の音楽教師に。その後、北島三郎一門となり、1982年6月、キングレコードより『俺に咲いた花』でデビュー。代表曲に『木曽路の女』『津軽の花』など。『NHK紅白歌合戦』に3年連続出場、日本レコード大賞金賞6度受賞。2024年12月に新曲『春街酒』、アルバム『遥かなる路』をリリース。著書に『ひばりとカラス』(読売新聞社)、『夢ひとすじに』(竹内書店新社)がある。