綾瀬はるか主演の終活ドラマ『ひとりでしにたい』制作統括が語る裏のテーマは「幸せかどうかは自分で決める。勝手に可哀想って決めないで」

 (『ひとりでしにたい』/(c)NHK) 
綾瀬はるかさん主演のドラマ『ひとりでしにたい』(NHK総合、土曜午後10時~)の初回が6月21日に放送された。主人公の山口鳴海は39歳。愛猫と暮らし、推し活に打ち込み1人暮らしを満喫していた。しかし、憧れていた独身の伯母が孤独死したことをきっかけに、「1人で死にたくない」とあせって婚活を始めるもののうまくいかない。方向転換した鳴海は、婚活ではなく終活を考え始める―。親の介護、老後費用、小姑問題。よりよく死ぬためには今から考えなければならない  問題がたくさんあった。カレー沢薫さんの人気漫画をドラマ化した社会派コメディ。制作統括の高城朝子さんに、綾瀬さん起用の意図や作品の舞台裏について聞いた。(取材・文:婦人公論.jp編集部)

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【写真】笑顔を見せる綾瀬はるか

『ひとりでしにたい』というタイトルなので、私自身が原作を手に取るときに、読むのが怖かったんです。でも読んでみると、楽しくて笑って勉強できる作品でした。ぜひドラマ化したいと思いました。

<独身の鳴海は自分で買ったマンションで1人暮らし。保護猫を飼い、男性アイドルの推し活にいそしみ、毎日が充実していた。推しのアイドルの動画を見ながら元気に踊る様子からは、悲壮感はなく、楽しそうな雰囲気が伝わってくる>

私は独身ですが、今までのドラマで描かれた独身女性は、「ちょっとかわいそうだけれど笑う」というような感じの自虐キャラクターとして扱われることが多かったと思っています。

でも、『ひとりでしにたい』の主人公の鳴海ちゃんは、すごく明るく楽しく生きている。そういう底抜けの明るさがあって楽しそうな人に演じてもらいたいと思いました。そう考えたときに、綾瀬はるかさんは、老若男女誰からも好かれるというか、ハッピーなオーラが出ている人なので、この人が演じてくれたらかわいそうな役には絶対に見えないと思いました。

原作のエピソードを残して

<キラキラした日々を送っていた鳴海。憧れていた伯母が風呂場で孤独死したことをきっかけに、伯母の遺品を引き取ることに。遺品から見つけた小型の道具が何かわからなかったため、職場に持っていく。「美顔器系だと思うけど」と使い道を同僚に尋ねると、「女性向けバイブレーター」だと指摘される。伯母の遺品だと告げると同僚は気持ち悪いと吐き捨て、鳴海はショックを受けるという展開が描かれた。原作にもあった衝撃的なエピソードだ>

バイブレーターは「ひとりで死ぬのはかわいそう」と世間から思われる“象徴”になっていると思い、原作のままエピソードを残しました。その“象徴”としてのバイブレーターが、全6話を通じて少しずつ見え方が変わっていきます。

実はこのドラマの裏テーマは「幸せがどうかは自分で決める」です。「ヒトを勝手に可哀想って決めないで!自分で決めるから!」という私の個人的な願いが多めに入っていますが(笑)ドラマを観てくださった方が、ちょっとでも生きていくのが楽になれたら嬉しいです。

わからないことが怖い

<伯母の孤独死から焦りを感じた鳴海は「1人で死にたくない」と婚活を始める。しかし、マッチングアプリもうまくいかず、職場の後輩、那須田優弥(佐野勇斗)からは「結婚すれば安心って昭和の発想ですよね?」と切り捨てられる。落ち込む鳴海だったが、今の自分を否定する必要はないと思い直して、1人で生きて1人で死にたいと決意。そのためによりよく生きる方法を探し始める――>

(『ひとりでしにたい』/(c)NHK)

人ってわからないことが怖い。老後には2000万円が必要だと言われていますが、親の介護や自分の老後にかかるお金がいくらなのか、などいろいろなことが分かったら「ああ、知っている」と準備ができて未来が怖くなくなると思うんです。

全6話という短い期間ですが、鳴海ちゃんが、1人できちんと死ぬためにはどうしたらいいのか考え、自分が将来死ぬまでに起こりうる問題について明るく立ち向かっていきます。それを見ていただければ、死ぬのが怖くなくなるとは言いませんが、分からなかったものが分かるようになって、ちょっと明るい気持ちになっていただけるんじゃないでしょうか。

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