七海ひろき&美弥るりか、似た性格の宝塚同期は受験スクール以来25年超の仲 それぞれが感じたお互いの転機とは?
04/29 07:00

クランクイン! 写真:上野留加
元宝塚歌劇団男役スターで、退団後は唯一無二の存在感を発揮しさまざまなフィールドで大活躍を続ける七海ひろきと美弥るりか。同期の2人が、七海がプロデュースするQQカンパニー公演第2弾『MISSDIRECTION』で念願の舞台初共演を果たす。同郷で性格も似ているという七海と美弥に、本作の魅力やお互いの初対面での印象などをたっぷり語ってもらった。
◆七海P第2弾公演は「美弥ちゃんありきで考えた作品」
――まずは七海プロデューサーから本作誕生の経緯をお聞かせください。
七海:QQカンパニーは演劇をしたいと私が立ち上げたカンパニーです。1つのシチュエーションの中でどのような芝居ができるかというシチュエーションコメディをやっています。第1弾では小劇場での楽しさを味わいまして、今回第2弾ではちょっと大きな劇場で人数も増やしてやっていこうと思っています。
――美弥さんは今回主演として七海Pからオファーを受けられました。
美弥:同期ではありますが、日々カイちゃん(七海)の活躍をすごく楽しみにしている1人でもありますし、カイちゃんがどんどん新しいことに挑戦している姿を本当に素敵だなと尊敬していました。そんなカイちゃんから直接熱いオファーをいただいてとてもうれしかったですし、光栄です。
――主演を美弥さんにお願いしたいと思われたポイントを教えてください。
七海:まずこの第2弾のQQカンパニー公演をするにあたって、美弥ちゃんが受けてくれたらやる、出てくれなかったらまたちょっと考えるぞっていう気持ちでお願いしました。美弥ちゃんありきで考えたところがあるので、出てくれるとなって本当によかったです。
元々長い付き合いではあるんですけど、芝居を一緒にしたことはなくて。在団中からいつか一緒に芝居をしたいなという思いがあり、第2弾をやるとなった時に、ずっと思っていた美弥ちゃんとできる!と。
個人的に美弥ちゃんの切ないお芝居が好きなんです。ミステリアスでクールな役が多かったのでいつもかっこいいな、美しいなと思っていたんですよね。一緒にできたらそれを近くで見られる!という気持ちもありオファーしました(笑)。
――美弥さんの役どころの紹介に「マイペースで掴みどころがない」とありましたが、あれは当て書きの部分が…。
美弥:マイペースはマイペースだと思いますけど、どうでしょう?(笑)
七海:マイペースだっていうのは、前から確かに思ってる(笑)。でも、私もマイペースなので、お互いマイペースだからこそ一緒にいて楽な部分がすごくあるというか。
掴みどころがないというのは、なんだろう、結構いろんな面を持っているんですよね。しかも、今日はクールめだな、今日はふにゃふにゃしてるなと会う時によって違って。その時にやっている役によって違うのかもしれないですが、ちょっとそこは面白いなと思っています。
美弥:自分は一定のつもりだったけど、きっとあるんでしょうね。その時に頭で考えていることが表に出ちゃっているのかもしれない。
カイちゃんも私もマイペースだし波長は合っていると思います。声のトーンや話し方もせかせかしていない感じですし。
同期としてずっとカイちゃんのホワホワした癒やし系な部分はたくさん見てるんですけど、きっと私の知らないところでもたくさんこの作品のことに携わって、いろんなことを相談して時間をかけてここまで来てるんだと思うんです。現場に入ってからもお芝居している姿も新鮮でしょうし、プロデューサーとして周りを見て、カイちゃんのセンスを発揮する姿を近くで見られるのかなと思うと楽しみです。
◆ネタバレ厳禁 新感覚クライムシットコムは「何度も観てほしい作品」
――今回の『MISSDIRECTION』はネタバレ厳禁の新感覚クライムシットコムで、「すべてを疑え。それでもあなたは騙される」というキャッチコピーが付くなど、事前にあまり詳細を明かせない作品です。
七海:ストーリー自体は1回で理解できるんですけど、例えば主演の美弥ちゃんを中心に観ていたらきっと見逃しているところがあって、それによって話が変わっていくというか、観方によって感じ方が変わる作品になるんじゃないかなと思っています。もし余裕がある方は登場人物9人分の視点で観ていただけたら、いろんなものが見えてきたりする面白い作品になると思います。大阪と東京で結末の違うアナザーエンディングになっているので、そこも楽しんでいただけるとうれしいです。
美弥:私も台本を読みましてすっかり騙されました。たくさんの仕掛けがあって、めちゃくちゃ面白かったです。お客様には感想をつぶやいてほしいけど、いろんなことがネタバレになってしまうので、内容には触れずに面白かった!と広めてほしいです。
七海:そして、一度ご覧になったお客様は初見のお客様をぜひ一緒に騙してほしいですね。
――ちなみにお二人は、謎解きや人狼などは得意ですか?
美弥:人を全然騙せないです。ババ抜きでさえ全部バレてる(笑)。
――お二人以外に、妃海風さん、海乃美月さん、緒月遠麻さん、帆純まひろさん、野々花ひまりさん、千海華蘭さん、羽立光来さんと魅力的な皆さんが顔をそろえられます。
七海:最終的に全組の方がいるというキャスティングになったんですけど、そう狙っていたわけではなくて。一緒にやりたいな、美弥ちゃんとの掛け合いが見たいなと思った人たちを集めたら、このメンバーになりました。
美弥:すごいね! 風ちゃんは星組時代にちょっとだけでしたし、緒月さん、帆純さん、野々花さん、羽立さんとは初めてなのですごく楽しみです。もちろん演じられているのを客席から観たことがありますし、皆さんすごくお芝居がお好きなんだろうなっていう方々ばかり。お話したことがほとんどない方もいらっしゃるのでちょっとドキドキしながら楽しみたいと思います。
七海:呼び方もまだ決まってないもんね。
――美弥さん、人見知りは大丈夫ですか?
美弥:人見知りだったんですけど大丈夫になってきました。宝塚時代ってみんなもう家族みたいになるじゃないですか。そういう時って、新しい人に会うと超ドキドキしてたんですよ。でも、今はどこに行っても初めましてで。そうしたら人見知りを隠すのがうまくなってきたというか、人見知りなんてしません!という顔でニコニコとお話できるようになってきました。
七海:私も最初はちょっと人見知りが出てました。今でも時間がかかるタイプかなと思います。こうした取材の時は大丈夫なんですけど、舞台になると結構密に関係性を築いていくので、お話していくうちにだんだんとほぐれていく感じですね。
◆公演をプロデュースすることで感じた醍醐味
――七海さんにとってプロデュース公演は2作目となりますが、前回第1弾の『THE MONEY -薪巻満奇のソウサク-』でのどんな経験が活きてくると思いますか?
七海:この人でこういうものをやったらこうなっていくだろうなとちょっと想像ができるようになったというか、このメンバーが集まったらこういうものができるだろうなと考えられるようになったかなと思います。私自身視野が狭くなっちゃうタイプなので、ちょっと広く持てるようになれたらいいなっていうのは、いつも課題のように思ってます。
――いつも冷静にいろんなことを判断されているのかなと思っていました。
七海:そう思われがちなんですけど、逆なことが多くて。1つのことに集中しちゃうと分からなくなってくるタイプなんです。今回は人数も増えるので、ちょっとでも視野が広がるように頑張りたいなと思っています。
――プロデューサーとして前回特にここが面白かったなと感じたポイントはどこでしょう。
七海:すっしぃさん(寿つかさ)を主人公にして物語を届けたいなと思った時に、皆さんが観たい!と喜んでくれて。答え合わせじゃないですけど「私が思ってたこと、みんなも思ってた!」とウキウキワクワクしたことや、初日が開けたときのお客様の反応はすごくうれしかったです。
――美弥さんも昨年明治座で『M FESTIVAL』をプロデュースされました。
美弥:やり終わったあとは燃え尽きて、「ちょっと、半年もらっていいですか?」って思いました(笑)。音楽フェスティバルだったので今回のお芝居のような大変さはなかったんですけど、でも楽曲も多かったですし、出番のバランスも全部自分が決めたので、「しばらくはもう大丈夫でーす」っていう感じでした。
でもお客様の反応がすごくうれしかったんですよね。皆さんの高揚感って肌で感じるじゃないですか。あの喜びは忘れられないので、自分の頭にちょっと余裕ができた時に、皆様に喜んでいただけるお祭り的なものをまたやりたいです。今回カイちゃんのお芝居に参加させていただいたら、今度はお芝居も自分でやってみたいなって思ってしまうんだろうな、と予感しています。
七海:『M FESTIVAL』、公演中の休演日にやってたよね? 「この人、何やってんだろう? どうやってやってんだろう?」って思った(笑)。
美弥:あの時の私はおかしかったと思う(笑)。ハイでしたね。夜中まで準備や打ち合わせをして、昼間と夜は公演に出て、で、休演日は本番をやって。逆に気を抜けなかったので、最後まで元気にできたんですけど。公演の休演日だからこそセットもお借りできて、プロデューサーとしてはその分の予算も切り詰められたのがありがたかったですし、劇場さんにもすごく助けていただいて叶えられたことでした。
◆受験スクールからの友達 25年超の付き合いで変わったところは?
――先ほど、お二人ともマイペースだというお話がありましたが、同期で、同じ茨城県出身で、共に組替え経験があり、退団も同じ年。さらには入団前に憧れていたのが、涼風真世さん、天海祐希さんとあの時代の月組という共通点も。そんなお二人ですが、初めて会った時の印象は覚えていますか?
美弥:私たちはスクールが一緒で、受験前からお友達だったんです。今は“スタイリッシュ七海ひろき”ですけど、初めて会った時は眼鏡をかけていて、素朴さも残った“スタイリッシュカイちゃん”の生まれる前、エピソード0のころでした(笑)。
ホワホワしていて、みかんが大好きで、喋ると今よりゆっくりで、安心してしょうがなかったんですよね。というのも、東京の人たちのバチバチ感というか、絶対受かるぞ!みたいところにゆるゆるしたまま行ってしまったので。カイちゃんは唯一の心のよりどころで、同じ茨城の子がいてめちゃくちゃうれしい!って思いました。
七海:私は、同じ茨城とは思えないぐらい、美弥ちゃんはお人形みたいだったんですよ。キレイなロングヘアで、今でも覚えているんですけど赤のコートを着ていて。
美弥:なんで赤のコートなんか着てたんだろう? 東京に負けない!って気合い入ってたのかな?(笑)
七海:その姿がとても洗練されて私には見えて。しかも、バレエを長年やっていたから、「すごいバレリーナが来たぞ!」とその受験スクールがザワついたんです。なので私にとってはその時からずっと憧れの対象だったし、同じ茨城出身で私の方が先にその受験スクールに入っていたので仲良くなるぞ!と思い、いっぱい話しかけに行っていろいろと教えたりして仲良くなろうとしました。
――そんなお二人が89期として一緒に合格されたときのお気持ちは?
七海:美弥ちゃんは絶対に受かると思ってたんです。第一印象から「もう絶対にこの人は受かる」と。「受かると思うから仲良くしておこう!」という計算があったぐらいだったんですけど(笑)、まさか自分が!と思ったので、すごくうれしかったです。
美弥:宝塚での最終試験の時に撮った写真がまだ残っているんです。仲良くしていたから本当にうれしかったですね。しかも宝塚音楽学校に入ってからはお掃除場所も一緒だったんですよね。
――音楽学校入学が2001年なので、今年で25年。この25年変わったところ、変わらないところはどんなところですか?
美弥:根の部分の優しさや穏やかさは全く変わらないです。でも私が明確に「カイちゃんが変わった!」って覚えているのは、研6くらいの時に劇団の1階の廊下ですれ違ったんですね。それまでは同期からすると「カイちゃん、大丈夫?」って感じだったんですけど、その時は向こうから歩いてくるカイちゃんが一皮むけていたんです。すぐに隣にいた子に「カイちゃんがめちゃくちゃカッコよくなった!」って言った覚えがあるくらい。その後に新人公演で大きな役を任されたりし始めた時期だったので、自分の中で何かきっかけや意識改革があったんだと思うんです。それを私はパッと会った時に強烈に感じたんですよね。
七海:美弥ちゃんも同じで根底の部分はたぶん全然変わっていなくて。一緒にいつもホワホワして、ゆっくり喋って、マイペースにやってるんですけど。
でもなぜかクールだとかあまり熱くならないっていうイメージが音楽学校のころからみんなに定着していたんですよね。同期にも「熱い血を流して!」みたいに言われたり。
美弥:「青い血が流れてる」って先生に注意された時があったんです。それを同期がその後もずっといじって。
七海:でも受験時代から本当に本気で目指して、一生懸命やって、宝塚に対する愛もめちゃくちゃあるって私は知っていたから、なんでそんなことをみんな言うんだろう?と思っていたんです。舞台で放つものもクールで青い炎みたいなところがあったんですけど、ある時すごく赤い時があって。何かを燃やしている時期があったんです。美弥ちゃんの中で熱い情熱を燃やしていけるように安心して委ねられる状況になっているんだろうなと感じました。今もそれがずっと続いてる感じです。
――今回初めてお芝居を交わされることがとても楽しみですね。
美弥:稽古場が一緒になるのも初めてなので、近くで観られるのがうれしいです。しかもこの愉快な皆さんとご一緒できるのも楽しみですね。
――シットコムということでコメディ部分にも期待してもいいですか?
七海:大丈夫です。笑える要素にも期待してください。
――美弥さんはゲラではないですか?
美弥:ゲラです!(キッパリ)
七海:私は結構我慢できるタイプなんですけど、このメンバーだとちょっと怪しいなって思います(笑)。
美弥:私の役どころはちょっと笑っても大丈夫そうなんです。でもカイちゃんの役は…。
七海:難しい! 前回は唇をグッと噛んで我慢しましたけど、今回も耐えるしかない(笑)。
(取材・文:田中ハルマ 写真:上野留加)
QQカンパニー公演第2弾 舞台『MISSDIRECTION』は、5月28日~31日大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、6月17日~21日東京・シアターHにて上演。