鈴木隆行氏手記 水戸のJ1昇格「本当にうれしい」震災直後の11年加入時回想「給料をもらうわけには…」
11/29 19:12

◆明治安田J2リーグ▽第38節 水戸2―0大分(29日・Ksスタ)
水戸が悲願のJ1昇格とJ2優勝を決めた。大分を2―0で下して2位以内を確定させ、2000年のJ2参入以来、26年目で初のJ1昇格となった。元日本代表FWで、11~14年に水戸に在籍した鈴木隆行氏(49)がスポーツ報知に手記を寄せた。茨城・日立市出身の鈴木氏は2011年3月の東日本大震災の発生を機に、現役引退を撤回して異例の無報酬契約で水戸に電撃加入した舞台裏を明かし、悲願の昇格を果たした古巣にエールを送った。
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本当にうれしいですね。自分が在籍し、J1に上げたいと思って必死にプレーしていたクラブ。経営規模からすれば、なかなか難しいと思われていた中での昇格なので、正直、驚きもあります。
11年、米国のチームで現役引退を決断し、帰国した時に震災が起きました。何か復興のために力を貸したい、協力したいという思いが強く、地元で何かお手伝いできることがあればと思っていました。水戸の経営状況が芳しくないという記事も見ていたので、面識があった柱谷哲二さん(元日本代表MF。当時の水戸監督)に電話しました。スポンサーを探すだとか、そういう裏方としての協力ができればという考えでした。
柱谷さんは「プレーヤーをしてくれ」と。引退から半年間、全く動いていなかったし、プロで戦えるコンディションではないと伝えましたが「やってみて、ダメだったら辞めればいい」と説得されました。
とてもじゃないけど、給料をもらうわけにはいかないと伝えました。自分から言い出したことでしたし、クラブの状況も理解していたので。アマチュア契約でまとまりました。
(練習拠点の)グラウンドはなく、練習場は転々としました。給料もみんな高くないので、食生活だったり、コンディション作りだったりのための自己投資もできない。活躍した選手が他クラブに引き抜かれることも致し方ない状況でした。
観客動員数を増やすことも、なかなか難しかった。勝てないのもあるし、営業努力をしようにも、そもそもスタッフの数が足りていない。努力したいのに、できない。そういう難しさはずっと抱えたままでした。
自分がチームを離れてからですが、みんなの努力でクラブ規模が少しずつ大きくなり、(18年に)グラウンドができたことは大きかったはず。練習拠点やジムもない環境だと、なかなか選手の獲得も難しかったと思うので。そういう努力の積み重ねが、今回の結果につながったことは間違いないと思います。
森監督は現役時代から十何年もチームに関わってきて、成功だけでなく、クラブとしての数々の失敗も見てきた方。自分が監督になった時を想定し、自分の色を出していく準備もしていたと思います。人間性も素晴らしい方です。
J1になればステータスもブランド力も上がり、サポーターも増えると思いますが、大事なのはここから。喜んでいる余裕はないと思います。選手の給料を上げる必要があるし、フロントスタッフの人数も増やさなきゃいけない。でも、もし経営規模を拡大してJ2に落ちてしまったら、今度はクラブがピンチに陥ります。危機感を持ち、J1定着に動いてほしいなと思います。
頑張って戦っていれば、水戸の街も絶対に盛り上がります。茨城には鹿島もいますし、相乗効果もすごいはず。3、4年とJ1に居続けて、水戸がJ1にいるのは当たり前だと思われるぐらいまでいってほしいですね。
◆鈴木 隆行(すずき・たかゆき)1976年6月5日、茨城・日立市生まれ。49歳。95年に日立工高から鹿島入りし、96年にJデビュー。国内では市原(現千葉)、川崎、横浜Mにも所属し、11~14年に水戸在籍。ブラジル、ベルギー、セルビア、米国でもプレー。日本代表通算55試合出場11得点。02年日韓W杯ベルギー戦でゴール。J1通算108試合出場17得点、水戸ではJ2通算126試合出場24得点。現在は指導者、評論家として活動。