5.4米再上陸を前に井上尚弥が「疲労ピーク」と明かすも大橋会長が「それが調整の順調な証明」と太鼓判を押す理由とは?

 プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(32、大橋)が21日、横浜市内の大橋ジムで日本フェザー級12位の高優一郎(横浜光)と6ラウンドのスパーリングを行った。大橋ジムがメディアへ報告したもの。5月4日に米ラスベガスで行われるWBA同級1位のラモン・カルデナス(29、米国)との防衛戦に向けての最終調整を井上は「疲労がピーク」と明かしたが、大橋秀行会長(60)は「それが調整の順調な証明」と明言した。なぜなのか?

 日本フェザー級12位の高優一郎と6回のスパー

 渡米を前にスパーリングは最終段階に入った。この日は、4戦4勝の1階級上のフェザー級のホープ、高を相手にしての6ラウンド。高は、昨年デビューしたばかりだが、拓大で全日本3位に入るなどアマ36戦の実績があり、力感のあるジャブに、ぶれずに強打の打てるフィジカルを持ちインファイトもできる。
 井上が、「リードパンチが優れていて凄くタフな印象を持っている」と分析する“仮想カルデナス”にピッタリで、これが3度目のスパーだった。
 スパーでのテーマについては「具体的には言えない」とカーテンを引いたが「1つ1つ考えながらやっています」という。
「そこ(カルデナスのイメージ)を頭に入れつつもあるし、自分の動きを確認する部分もあるし、いろいろなイメージしながらやっていますね」
 もう一人、パートナーに選んでいた日本スーパーフェザー級2位の砂川隆祐(沖縄ワールドリング)も、ジャブとフィジカルが特徴の正統派。
「地獄のパンチを持つ男」との異名を持つカルデナスの何を警戒しているかが、井上が選んでいるパートナーのスタイルから透けて見える。
「疲労はピークですね。それはこの時期、いつも通りのこと。逆に順調だなと思っています」
 試合から逆算して約2週間前が減量と、積み重ねてきたスパーの疲れが重なって疲れはピークになる。
 大橋会長も「今日のスパーリングも言うことないですし、調子もバッチリと言っていい。本人の疲れはピークだが、それが調整が順調だということを証明していると思う」と明言した。その疲労こそが、肉体と技術を作り上げてきた練習量の証。今回、井上はいつも以上の厳しいトレーニングを自らに課した。
「今回はメンタルトレを多く入れる。ラスベガスのTーモバイルでやるんだから精神的に強くしないとね。脳のスタミナ、精神的な部分が大事になる。メンタルトレ?強度なトレーニングがメンタルトレになる。それをやりきるってこと」
 ビッグマッチが開催されることで知られるメキシコの記念日「シンコ・デ・マヨ」ウィークのトリを務め、しかも“新聖地”T―モバイルアリーナでメインを張る。それらの目に見えぬプレッシャーをはねのけるため「メンタルを鍛える」ことをテーマにしてきたから、この疲労は、そのメンタルが出来上がったことの証明でもある。

 

 そしてこの時期に疲労をピークに持っていけば、その後、練習量を落とし、疲労を回復させていくと、リングに上がるときに最高のコンディションにV字回復させることができる。ここまで世界戦を24試合こなしてきた井上が自らの経験をもとに試行錯誤を繰り返しながら作り上げた必勝スケジュール。その疲労のピークの時期が遅れても、早くてもダメなのだ。怖いのは、疲労のピーク時に起きる怪我だけだが、そのアクシデントもなくここまでこれた。
「かなり順調にきていると思います。自分自身、かなり良いと感じています」
 国内でのスパーは残り1回で打ち上げて今週中に渡米。米国では実弟で前WBAバンタム級王者の拓真、ウェルター級で復活したばかりのいとこの浩樹を相手に軽いマススパーで本番を迎える予定で、「何となくですけど、(米国での調整)プランというかはイメージしている。まあ普通に練習するだけなので」という。
 ラスベガス上陸は4年ぶりだが、これまで英国グラスゴーも含めて、海外での試合は4試合こなしていて、米ロス合宿も張ったことがあり、「日本から持参するものは特にない」。おそらく気分転換で拓真らと遊ぶゲームソフトくらいだろう。
 また今回は米国入りした後は、海外メディア向けの公開練習や、ショーのような米国式の記者会見、計量などの「ファイトウィーク」と呼ばれる行事がある。
「そういう行事は楽しみですよ。ファンの方の前での行事になるので。1つ1つのイベントを楽しみたいなと思います」
 マスコミは殺到するだろう。だが、井上はそういうフィーバーを楽しみ力に変えようと考えている。
 ただひとつ変わったことといえば、ゴールドに染めたヘアセット。
 その意図を聞かれ「特に髪の毛の色に意味はないです。気分なので」と笑った。 
 2019年に英国グラスゴーに遠征してWBSS準決勝でエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)と戦った際に、専属の美容師を帯同させたことがある。今回どうするかは不明だが「気分で」また当日に髪の色が変わっているのかもしれない。そのファイトだけでなく頭の先から爪の先まで世界中のファンが注目している。

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